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2023/08/01
成功し続ける方法/536回<やはりスペシャリストを目指しておかないと(2)>
#536 やはりスペシャリストを目指しておかないと(2)
 
 
グローバル連結会計の話をしましょう。海外にある子会社のBSとIS(PL)をどうやって自国通貨に換算して連結するか、という例のアレです。

USCPA 受験生の中には「FARの最後に付け足された厄介な論点」としか思ってない方も多いですが、とても重要な論点ですのでしっかり勉強してくださいね!笑

この1年あまり、USドルと日本円(ドル円)の為替相場はドル高(円安)になっています。日本円はUSドルだけでなく、ほぼすべての主要通貨に対して値下がりしました。

現在のドル円レートの特徴は、米日の金利差に強い相関があることが特徴です。CPA受験的には「金利が高いほうの国の通貨は高くなる」と答えればよいですが、現実はそう簡単ではありません。非常に多くの要因が複雑に絡み合って決まります。しかし、今の外為市場は、米日の金利差が際立って大きな要因となっています。

さて、ここにきて日銀の量的緩和の「出口」が近づいてきました。7月27日からの金融政策決定会合で、日銀が長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)を実質的に解除しました。

米欧ではひどいインフレが起こっていますが、日本はそこまでではありません。来年2024年には2%程度に落ち着くと日銀は見ているのでしょう。というのも、いまの日本のインフレの最大の原因は欧州と異なり、石油など資源高のせいというより、コロナ対策給付金などで配られたお金が使われているからだと言われています。これはすぐに使い尽くされますから、来年には消費バブルはしぼむでしょう。

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では2024年以降、長期的にはどうなるでしょうか?影響が大きいのは、実は「経常収支」なんです。日本という国の海外とのお金のやり取りのことですよ。この経常収支のうち、所得収支(企業の海外収益)が非常に大きくなっており、貿易収支の赤字を大きく上回っているのです。

日本企業はこの25年間、慢性的に貯蓄過剰です。つまり国内に投資先がなく、猛烈に海外投資してきたということです。企業の海外投資は2000年以降大きく増えておりまして、これが会計シロウトのみなさんからは「多額の資金が内部に留保されている」「従業員に還元しろ!」などと誤解されていますが、できまはせんよね。だって実態は株式などの保有有価証券、つまり海外の子会社や関係会社へ投資しちゃってるのですもの。

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若いみなさんは信じないかもしれませんが、1990年代までは日本企業の会計は単体・単年度が中心でした。要は納税のために決算していたようなもんだったからです。

子会社の会計は参考情報だったので、不良債権を「連結対象外の子会社(というのもたくさん存在できていた)」に飛ばし、本社の財務諸表をお化粧するのはいわば「常識」でした。

2000年に会計ビッグバンによって連結会計がメインになりました。海外子会社を含めた連結決算で企業の意思決定が行われるようになったのです。本体の決算をお化粧することはできなくなり、というかその必要もなくなりました。

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2008年以降に円高が進み、輸出価格が上がったので、急速に海外生産が進みました。どんどん工場が海外に出ていきました。いわゆる「空洞化」ですね。幸いにも決算が連結メインになったので、日本のグローバル企業は「稼ぐのは海外」「国内はコンプライアンスとコストカット」で済むようになった。だから日本本社の従業員の給料は上がりません。

その後、日銀は量的緩和(円安誘導)を始めましたが、1ドル=90円から120円になっても、輸出は増えませんでした。それどころか経常収支は、貿易が2013年から赤字に転じ、そのかわりに所得の黒字が増えました。

そして海外投資は一貫して増え、グローバル企業の決算を支えています。こうなると、いまさら円安に転じてもそう簡単に工場は日本に帰ってきません。

円安になると海外子会社の売上高や利益を日本円に換算するときに金額が増えるので、へたに海外子会社を日本に持ってくることができなくなってしまったのです。経常収支の所得収支を減らすことができないというわけ。

このため、日本のグローバル大企業は(連結で)史上最高益ですが、国内に工場を作るなどの投資は増やさず、賃金も上げられません。

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さらに、日本には工場を支えられる人材がいなくなったのも大きい。この20年、日本企業は工場で働く人を減らし、オフィスで「企画」「計画」「推進」などの謎の仕事をする人を増やしすぎてしまいました。

そして数年前から、「企画」「計画」「推進」などのホワイトカラーを大量に早期退職させている有様です。定年が70歳まで延びることをみこして、とにかく正規雇用を減らしたいわけですね。

この「企画」などの方々は、子供の時から「大学を出てオフィスで企画仕事をするのが『正しい』」「『現場』で汗水流して働くようでは『ダメ』」という価値観を刷り込まれている方々も多いですね。したがって仮に工場を海外から戻したとしても、そこで働くブルーカラーの方を確保できない。現在、あらゆる「現場」で人手不足になっているのが、その証拠です。

ずばり、国際分業で賃金(単位労働コスト)が等しくなっているわけです。日銀がいくら円安を守っても工場は帰ってきませんし、ホワイトカラーの「企画」「計画」「推進」のジョブも戻りません。

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.....みたいな議論が、USCPA資格の学習をすると理解できるようになります。というか、こういう議論ができずにただ「簿記ができます」というだけでは、もうなかなか仕事はないんです。

最近、国内のホワイトカラーのみなさんには、グローバルの舞台に飛び出していこうと言う意欲がすごく減っていると言われていますけれども、じゃあ国内でどうやってサバイバルしていくのか。どんどん減っていくホワイトカラージョブの争奪戦に巻き込まれたまんまでいいのか。

戦略を考えるためには、まず、「戦略的に動いている人たちが共有している基礎知識」を身につけないといけないんです。彼らはその知識を自分たちは共有しているということを、決して「自分たち未満」の方々には教えてくれません。だから彼らはただ単に、バエる投稿をSNSにあげてるだけに見えますよね。でも本当は、そうじゃないんです。



TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師
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