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2023/03/02
成功し続ける方法/515回<自分の弱さにうち克とうと努力している人は、自分の強さを過信している(3)>
#515 自分の弱さにうち克とうと努力している人は、自分の強さを過信している(3)


「人間は、己(おのれ)の弱さに打ち克てるものである」
「ていうか、克たないといけない」
「己の弱さに克てないような人間は価値が低い」

そう信じ、かつ教え込んできた社会や組織であれば、「内部統制」などただの形式にすぎないのは、至極当然である。

というのも、内部統制は人の【性弱さ】を「前提」としているものだからだ。人が自分の弱さに克つという奇跡を期待せず、「弱さゆえの悪事」を予防するシステムだからだ。

つまり、役員や従業員の【性弱さ】を客観的事実として認める。条件さえコンプすれば、誰でも・必ず「やらかしてしまう」ことを前提とする。

それは決してヒトをバカにしているのではない。大切に守っているのだ。もし気温零下の屋外でハダカで寝てしまったら、誰でもほぼ確実に生命に関わる。ヒトは毛皮ふさふさの動物より【弱い】からだ。それを前提に、凍えない手段を講じることは「恥」でもなんでもない。むしろ「寒さを克服しろ!」と要求するほうが間違っている。

同じように、【性弱さ】は克服するものでなく発動させないようにするものだ、とのかんがえから、条件をコンプさせない仕組みをつくり、メンバーがダークサイドに落ちないように守る。それが内部統制というものだ。

===

然るに、【性弱さ】は個々人が克服すべきであると信じる組織文化のもとでは、経営者が従業員を守るために真剣に内部統制システムを構築することはない。

例えば、経理をいち従業員に丸投げし、何年にもわたって何のチェックもしない(そのコストをかけない)という経営者は驚くほど多い。当然にその経理担当による横領は後を絶たないわけで、つまりこの場合、事実上の被害者は丸投げされチェックもしてもらえなかった経理担当のほうなのだ。その方をダークサイドに落とす条件4つがコンプしてしまっていたからだ。

条件1. 対象
横領の対象となる現金(預金口座)をまるっと預けられている

条件2. 機会
長年何のチェックもされず、何をしてもバレない

条件3. 動機
そこに従業員個人の「動機」が発生
(なんらかの理由でお金が要る)

条件4.正当化 
会社は安い給料で丸投げしてきやがったとか、社長の公私混同が酷くその経費処理を長年押し付けられてきたとか


この4つの条件をコンプリートさせたのは誰の責任か?3を除く三つは経営者の責任であると考える、それが「内部統制」の基本精神である。

これに対し、すべては従業員が「性悪(性弱ではなく)」だったからであり、経営者こそ純粋被害者だと片付けるのが「内部統制らしきものを、すべて個人の『強さ』に依存する組織」のおそろしさだ。

ヒトの『強さ』を過信する組織なのに、なぜかガバナンスはできている!なんて都合のいいことは、決してありえないのだ。


(続く)


TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師
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