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2023/02/22
成功し続ける方法/514回<自分の弱さにうち克とうと努力している人は、自分の強さを過信している(2)>
#514 自分の弱さにうち克とうと努力している人は、自分の強さを過信している(2)


「自分の弱さに打ち克て!」
その無責任な指導が、どれほど多くの若者をダメにしてきたことか。いや若者のみなさんだけでなく、いい年をした大人の方々もこの呪文で苦しんでいる。

前回は、あくまで一例として「8割聴く」というめちゃくちゃハードルの高いスキルを、いかにも誰でも身に付けられることであるかのように推奨することの無責任さを解説した。ごくごく限られた精神と肉体の「強さ」をあらかじめ持っている方なら「8 割聴く役割」を果たせるようになるかもしれない。しかしほとんどの方は、どれだけ誠実に自分に打ちかつ努力をして、「聴き続けられる人間」になろうとしても、無理である。その無理なことにそれこそ無理矢理挑むから、心と体に変調をきたす。


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何も、「いま現在できないことをできるように努力する事は、すべてダメだ」などと言う気はない。全く逆である。それはこのコラムの第512回まで数回にわたって述べた通り、ヒトは「達成感」つまり「さっきまでできなかったことができるようになった!」という自覚、これがあれば苦しい道のりでも楽しく持続し続けられるのだ。

もうお分かりだろう。「努力をすればできるようになること」を努力すればいいのだ。「努力しても克服できないこと」は、努力しても意味がないのだ。

そして「努力しても、克服できないこと」の最たるものが、自分の【性弱さ】なのだ。

人は、自分がいかに【性弱】であるかを客観的に自覚していることが大切だ。それは、自らの【性弱さ】を正しく恐れるということである。


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近視になってしまったら、メガネやコンタクトレンズや手術で視力を矯正する。近視であることを客観的に自覚して、その対策をとる。「自分は千里眼であるべきで、近眼なんて受け入れられない!」と抵抗し、裸眼のままで自分の「近視にうちかつ」なんて人はいない。そんな方にクルマを運転されたらどれだけ迷惑だろうか?

迷惑.....そう、我々の社会では「とにかく他人に迷惑をかけない」ことが最優先され、「その代わり他人の迷惑も許容しない」と言う不寛容さをよしとしている。「ぼくも迷惑かけることあるから、きみの迷惑もお互い様さ」という風に考える人は少ない。

日本は、直近の100年あまり、いろいろな奇跡が重なって「豊か」な国であった。それは幸せなことだったが、あくまでも異常事態であり、いつかは平常の「貧しい国」に戻る。その環境下では「お互い迷惑を許容しあう余裕」が精神的にも物理的にもない。

そのため「頼むから、俺に迷惑をかけないでくれ!」という感情がつのる。そのことを、若干いい方を柔らかくして「俺に甘えていないで、自分に打ち勝て!」と言うようになったのではないか。


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もちろん、いまここで「我々のDNAに逆らい、お互い迷惑をかけ、あうことをよしとする社会に変えていこう!」なんて破天荒な妄想を抱いているわけではない。そこは決して変わらない。

しかし、その最優先事項「他人に迷惑をかけない」ということと、「自分に打ち克つ」ということは、本来別々のことである。いくら「自分に克っている方々」だって、何かの拍子に他人に迷惑をかけてしまうことはあるだろう。

言い換えると、「自分の【性弱さ】を克服する」という難行を成し遂げた偉人聖人でなくても、我々の社会で「他人に迷惑をかけないように気をつけて振る舞う」ことはできる、そう言われれば当たり前だ。


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迷惑をかけないように生きているんであるなら、【性弱】であることを客観的に自覚すればよいのだ。【性弱さ】を、恥ずかしい格好悪いと思うからいけない。つまり、自分の「強さ」を過信して、自分は【性弱さ】に打ち克てるはず、などと誤解してはいけないのだ。

そう誤解するから、「本当は強い」自分にとって【性弱さ】はあってはならない、許せない、ということになってしまう。そして、自己肯定感を守り抜くために、打ち克てない【性弱さ】を隠そうとする。

我々は、【性弱さ】がバレないようにするために、職場で、学校で、所属組織で、家庭で、随分な無理をしているんじやないだろうか?

その無理が高じて、してはいけないことまでしてしまっている先輩や同僚や家族を、見たことはないだろうか?

「迷惑だけはかけてはいけない」という社会で、せっかく空気を読みまくって上目遣いで生きているというのに、自分(や上司さん)の【性弱さ】を隠すために、結果的にものすごく莫大な迷惑を社会にかけるハメになる。そんな事件を、我々は頻繁に目にしていないだろうか?

「自分の弱さに打ち克て」と他人に努力を強要することは、とても無責任なことなのだ。

では責任ある【性弱さ】との向き合い方とはなにか?もうお気づきだろう、それこそが「内部統制」と呼ばれる仕組みの根本コンセプトなのだ。


(続く)


TAC USCPA講座/草野龍太郎講師
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