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#507 2023年こそ「オタク」になる
「何かにめちゃくちゃ詳しい人」になりたがっている方々は多い。
つい最近までは「何かにめちゃくちゃ詳しい」ことは今ほど賞賛されていなかった。スペシャリストは終身雇用年功序列組織で《えらくなれない》典型だったからだ。
実際、いまでも中央官庁や大企業の「ジェネラリスト」の方々は、短期間で部署の異動を繰り返す。いわば「常に素人」であり、異動のたびにずーっと長くその部署を切り盛りしておられる「スペシャリスト」の方々に対して
「素人でわからないことばかりですが、一生懸命勉強しますので、いろいろ教えてください!よろしくお願いいたします」
と挨拶したりする。かたや「スペシャリスト」の方々も、この「素人でわからないことばかりのジェネラリスト」さんが、恥をかかずキズ付くこともなく、無事に次の異動を迎えてくれることだけを目指す。
こういう巨大組織のあり方はここ2-3年で少しずつ変わり始めてはいるけれど、それでも世の中の変化のスピードには及ばない。
ということで、「人生これから」という若い世代の方々の中には、「素人でわからないことばかりのジェネラリスト」さんが支配する組織を敬遠する動きもある。「何でも知っていて、よくわかっているスペシャリスト」についていきたい!と考えるわけだ。
そして、ついていくだけでなく、自分自身も《超絶なスペシャリスト》になりたいと願う。それはいわばビジネス上でのオタクである。
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USCPA試験は厳しい。しかし、これに最小限の労力で合格する方法はある。受講生のみなさんにはそのやり方でさっさと合格してしまってほしい。なぜなら、本当の勉強は合格してプロのタマゴになったときに始まるからだ。
「合格するまでにどのくらい勉強が必要ですか?」と聞かれる。人によってそれは数百時間から千数百時間まで様々だ。しかし、「しょせんは」千数百時間である。
その点、合格してからの勉強は「エンドレス」である。それは引退するまでの数十年間続く。というより、勉強できなくなったらその時が引退である。
朝から晩まで、なんらかの形での勉強が趣味(のひとつ)となり、勤め先が「休み」の日でも嬉々として勉強している。そうして勝手に成長する。そう、その姿はもう、会計プロ分野での【オタク】である。
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「これを知る者は、これを好む者に如かず(しかず)。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
『論語』の有名な一節である。「如かず」とは「勝てない」という意味だとしておこう。
以下のようなことだ。
・ムリな「努力」をしている人は、ラクに「努力」をしている人にけっして及ばない。カラダがエネルギーを回してくれないのに脳を酷使しようとしても、うまくいくはずがない。
・「努力」がラクにできるようになった人は、ムリな人たちよりはましである。しかし、その「努力」を嬉々として楽しんでいる方々に比べれば、やはり及ばない。カラダが「努力」にエネルギーを回してくれるようになったとはいえ、それだけなら単に「苦労が苦労ではなくなった」に過ぎないのだ。
・その「努力」を好きで好きで仕方がないというなら、まあ、ある意味無敵である。「ムリに努力している」とか「努力はべつに苦労ではない」というレベルでは、この「楽しい」という方々に持続的に勝ち続けることができるはずがない。
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あらためて、このコラムも11年目になったわけだが、一貫して読者のみなさんに
1.この先はキビしくなるばかり
2.他人に貢献(利他)できないとヤバい
3.しかし利他できるためにはそうとうの腕がないとダメ
の3点を繰り返し訴えてきた。そして今日、まさに「3」=そうとうの腕がフツーに求められるようになっている。
いくら利他の心がある善人アピールをしたところで、チカラなき善意は無意味である。激烈なる利他競争が始まっているのだ。利他のワザや知見がライバルより上回っていなければ、タダの善人には他人様に貢献させていただくチャンスなど回ってこない。
努力してますアピールをするようでは論外。好きでやってます程度でも足りない。楽しくて楽しくて仕方がないですというオーラが漂うオタクになる。これを2023年のアジェンダにしていただきたい。
みなさんよい休暇とよいお年を。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師