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#504 「学ぶ」には、まず「運動習慣」が要る(3)
「学び」と運動習慣の話を続けよう。
体重xsの人間がyq走ると、およそxy Kcalのエネルギーを消費するといわれる。60kgのひとが10q走ると600Kcal使うということである。
つまり、あなたが「ある日突然」10キロ走ると、「その日の」消費エネルギーは600 Kcal増えるわけである。仮にあなたが、まったく運動していない日に3,000 Kcal使う人だとすれば、「突然走った日」には3,600 Kcal使う計算だ。
ところが、あなたがその10qランを週に2〜3回行うようになり、つまり「習慣として続ける」ようになると、カラダは変化を始める。数ヶ月はかかるけれども、カラダは「別の活動」を止めて、ラン習慣のための600 Kcalを捻出しようとするのだ。
したがって数カ月後には、「10q走っても消費カロリーが3,000 Kcal」のカラダに「戻る」。その証拠に、運動だけで体重が減るのは数ヶ月だけであり、このため多くの「ダイエッター」が数ヶ月で挫折しリバウンドする。
ここでみなさんは疑問に思うであろう。「10qも走れるほどのエネルギー」を、10q走を習慣化する前には、いったい何に使っていたのだろうか?
実は答えは「何にも使えていない」。ただただ脂肪と化して蓄積されるか、もしくは体の中で「持て余しもの」扱いされ、暴走している。盗んだバイクで走り出したり、校舎の窓を全部割ったりする感じだ(参考までに草龍は尾崎豊さんと同年生まれである)。
とにかく、現代人の中で運動習慣がない方々は、体内の至るところで炎症が起きてしまっている可能性が高い。もちろんカラダはあえて喜んで炎症を起こしまくってているわけではない。
ヒトは何十万年も「飢餓がデフォルト」だった。現代人のように十分なエネルギーを食事から取れると言うことを、人の体は想定していない。かなり少食の方であっても、昔の王侯貴族のような栄養を摂っているといわれる。
カラダの想定キャパをはるかに超えてカロリーが余るために、カンカンの日照りが続いた森林の山火事みたいなもんで、延焼をどうにも止められないのである。
これは、カロリー消費習慣がいかに重要かということだ。まずは適度な運動習慣、そしてもう一つ盛大にカロリーを使うために、「新しいことを学んで記憶する」という、辛くて疲れる作業を習慣化していなければ、ヒトのカラダはカロリー余剰からの内部炎症で、どんどん老いてゆく。
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会社も同じである。「新しいこと」に対して、メンバーのみなさんのカラダが、「よっしゃー!」と前向きになることは決してない。それはメンバーのみなさんの生存本能が正常に働いているということなので、喜ばしい事態である。
ただ、現代社会は本能に身を任せるだけだとほんとうに全員失業していまいかねないので、あなたのようなリーダーは、多少の工夫を施さなければならない。簡単に言えば、数ヶ月間むりやりにでも「新しいことを学んで覚えて実践する」という疲れる習慣を続けてもらえさえすればよいのだ。そうすれば、ほとんどのメンバーのカラダが、その新しいことを新しいことだと思わなくなる日が来る、と言うことである。
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マラソンのテレビ中継を見ていると、こんなの2時間以上も大変だなぁと思うわけだが、現実には本当に苦しい状態が2時間も続くわけではないそうである。「苦しい」の直前ギリギリのところをどのくらい引っ張れるか、そこが競争(競走)の本質なんだそうだ。トップランナーであっても、本当に苦しくなってしまったら、ほんの数qも持たないんだそうです。
そもそも「努力」と呼ばれることがそういうものなのかもしれない。他人から見て「ものすごい努力」「大変そう」と思われても、本人は意外と「いやそこまでではない」と思っていたりする。
草龍も、日商簿記1級からUSCPAを受験する2年間、土日のほとんどTACにいたけれど、そのときはあまり大変だと思っていなかった。
この「自分では、特に大変な努力はしてないとおもっている状態」こそが、いろんなことを達成するための必要なんだと思う。自分のカラダが、じぶんの努力を努力と認識しなくなり、どうぞカロリー使っていいですよと「習慣化」すると、辛いと思うセンサーが止まるのだろう。
これが、自分に克つとかいわれていることの正体なんじゃないだろうか。必要なのは精神力とか立派な人格とか運ではなく、たんに数ヶ月間の「習慣化」だけなんじゃないか。
まとめよう。努力を努力と認知するのは、脳でなくてカラダであると考えてみよう。カラダはカラダの生き残りのためにカロリーを脳に回したくない。だから「うわー、こんな努力、まじで辛い!辛すぎる!!」と叫んで、学びや運動の努力を阻止しようとする。
しかし数ヶ月かけて習慣化すれば、「特に努力とかじゃなくて、やってます」って平然と言えるようになる。で、その状態が一番パフォーマンスが良いのではないか。
逆に言うと、「私の努力を評価してください」「どうして私の努力を見ていてくれないのですか」と他人(上司とか)にアピールしてしまう段階で、その人はカラダで努力を認知している状態なのだ。要するに「辛い」状態を引っ張ろうとしているわけで、トップランナーでも長く持たない状態にあるということ。一刻も早く負荷を下げて、数ヶ月で習慣化できるていどにしてあげなければならない。
TAC USCPA講座/草野 龍太郎 講師