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#503 「学ぶ」には、まず「運動習慣」が要る(2)
学べない社会人は多い。これはたんに「甘え」「危機感不足」のためだけではない。長い間学んでいないと「脳が学べるようなカラダ」になっていないのだ。
「学び」には膨大なエネルギーが要る。しかしカラダは(生存本能に忠実に)カロリーをケチり、脳にあらたなことを学ばせまいと妨害する。プラスアルファのエネルギーが脳に回してもらえず、いわば、太古の昔の方々と同じ状態になっているのだ。
原始人さんたちは、数百年・数千年かけて少しずつ変わっていった。「自分だけオンリーワンになるために新しいことを学ぶ」なんてことはまるで必要なかった。というか、むしろそんなことをしてはいけなかった。群れから浮いて、追い出されてしまったら、生きていけないからである。
上目遣いで空気を読み、群れの有力メンバーに媚びる。その技術はヒトが長年かけてつちかってきたものなのだ。「部長、さすがですうう」「まさに常務のおっしゃる通りですなあ」「いやー、まいりました!」そういう言動のためになら、カラダはよろこんでエネルギーを使う。しかし《リ・スキリング》なんかには、けっして貴重な資源を投入してくれない。
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ところが、世の中が変わった。あなたが長年にわたり全力で媚びてきた相手が、どうも頼りにならない。「群れのボスとしてエサを分配してくれる気配」が、さいきん全く感じられない。
なんならボス自身の保身のために、ナンバーツーを社外公募で連れてきたりする。かわいい手下だったあなたではなく.....。もしくは、あっさりと失脚したり早期退職してしまったりする。
あなたに深刻な生活の危機が迫っている。ああそれなのに、あなたは学べない。あなたが怠慢だからではない。長い間学んでいないから、「脳にエネルギーを配分する」ことができないのだ。
しかし絶望することはない。ヒトのカラダに、【あらたなカロリー配分のやり方】を教え込むには、数ヶ月あれば足りるという。しかもこれ、中年でも同じなんだそうである。
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例をあげよう。よく中年の方が運動を始めることがある。生活習慣病の警告をうけてジョギングを始めたりする、あれだ。
まず最初、カラダは驚く。運動なんかが習慣になっちゃうと困る。カラダは全力でジョギングを阻止しようとする。「めんどうくさいよ」「ふとんから出るの寒いよ」「お腹すいたよ」
その妨害は最初の3日間が激烈で、多くの人が「三日坊主」に終わる。そこを乗り越えてジョギングを習慣化すると、カラダは諦め始める。「むー、仕方ない、そんなにやりたいなら、ジョギングにエネルギー使ってイイですよ.....」となる。ここまで3週間くらい。
ここからカラダは【あらたなカロリー配分】に取り組みはじめる。つまり、ジョギングで使われてしまうカロリーの分だけ、「他の体内活動」でカロリーを使うのを止め始めるのである。
この入れ替えには数ヶ月かかる。つまり、ジョギングが追加された分、数ヶ月の間はエネルギー消費が増加する(このため体重が減っていく)。しかし数ヶ月でカラダの【エネルギー配分の変更】が完了すると、トータルのエネルギー消費量はジョギングを始める前に戻るのである(このため、ジョギングを始めて数ヶ月経つと、体重の減少が止まる)。
つまり、ヒトの消費カロリーは、運動をしようとしまいと変わらない。運動が習慣になっている人は、その代わり「他の何らかの体内活動」が行われなくなっている。ちなみにこの「体内活動」には「炎症」が含まれることが知られている。
数十万年のホモサピエンスの歴史で初めて、「飽食で、しかも運動習慣がないヒト」が地球上に爆増している。体内では使いきれないカロリーが全身至るところで炎症を起こして老化を促進しているのだ。くわしくはハーマン・ボンツァーさんの衝撃の書『運動してもやせないのはなぜか』を読んでください。
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本題に戻ろう。要は「学び」も、このジョギング習慣と同じなのである。
・最初の3日間で挫折するのは、あなたがダメ人間だからではなく、最初の3日間のカラダの抵抗が超激しいから
・3週間つづけると習慣化するのは、カラダが「抵抗しても無駄か」と諦めて、「しかたない、3ヶ月かけて、体内の炎症老化活動のエネルギーを脳にまわすようにするか」となるから
・【エネルギー配分】が変わりきる3ヶ月のあいだは、食事の量を増やすなどして、脳のための追加カロリーを切らさないようにする。体内の炎症などはすぐには止まらないからである
・数ヶ月たつと、カラダの中で【あらたなエネルギー配分】ができあがる。これが「勉強クセがついた」状態である
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こうなるとあなたは、ハタからみて「すごく努力している人」になる。しかし自分では「最近は、そこまでツラいわけじゃないんだけどな.....」と感じる。そう、それこそが「サステイナブルな努力」なのであり、通算1,000時間を超えるような受験勉強マラソンを「走り切れる」ということなのだ。
上記の【エネルギー配分変更】メカニズムは、わずか10年くらい前に発見されたことである。したがって学校も親も教えてくれるはずがなく、むかしながらに自然に学びクセを身につけられた方々だけが「学ぶ特権」を享受してきた。
そして、このメカニズムに気がつかない多くの方々は、「学ぶ?そんなこと、子供じゃあるまいし、おれにできるわけなーい」「でも大丈夫!おれ、専務に可愛がられてるから」と開き直ってきたわけである。
専務さんの任期に人生を全バリするのも、もちろん、あなたの尊い決断である。そして、ご自身の【新しいエネルギー配分】に数ヶ月トライするのも、また価値ある決断だ。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師