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2022/10/20
成功し続ける方法/498回<経理部門の業務時間短縮(時短)戦略(10)>
#498 経理部門の業務時間短縮(時短)戦略(10)


≪時短≫は、組織の目標とすべきものではありません。いわば準備運動、ウオーミングアップです。

大人になったら、カラダのあちこちが硬くなりますよね。若い頃と同じように動くことはできません。そこで、運動をする前には、若い方々とは比べ物にならないほど丁寧に、動的ストレッチなどの準備運動をしなくてはなりません。

例えば、いきなり「腕立て伏せ」をやろうとすると、肩を傷めたりします。うつぶせになって腕立て伏せを始める前に、まずは立ったまま壁に両手をついて、腕の曲げ伸ばしを数十回やってみる。そうすることで肩関節の小さな筋肉たち(ローテーターカフといいます)を動かしてあげるわけです。このステップを踏まずに、何十年間も固まったままの筋肉たちに腕立て伏せをさせると、彼らはたちまち損傷してしまいます。

ご自分の組織について、近代化を図らなければ生き残れない、と焦っている方は多い。その危機感は正しいと思います。しかし、これまで数十年間にわたって「硬化」を続けてきた組織に、突然負荷をかけたら大ケガをします。

いきなり「はいみなさん、明日からDX人材になってもらいます!ついては、研修ビデオ100本用意したから、3か月で履修してテスト全部合格しておくように、以上!」・・・これではメンバーのみなさんが壊れてしまう。せいぜいが「面従腹背」で自衛されるだけです。

ですから、≪時短≫を掲げ、まずそこをやり抜く。それによって、固まり切った筋肉組織を温めて、ほぐし、動けるカラダに戻す。あなたが組織の近代化に取り掛かれるとしたら、≪時短≫を達成したあとなのです。

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組織の話ばかりしてきましたが、実は、≪時短≫がウオーミングアップだというのは、みなさん個人にもあてはまります。

みなさんご自身が、変わらなければいけない!と思いたったとしましょう。どうやら「リ・スキリング」からは逃げられない。どうせそうなんであれば、全力で立ち向かってみよう。学生時代に徹夜してガーっとやっていたあの調子を取り戻せが、きっとできるさ。

そう思って資格試験に取り組み始めるわけですが、いつの間にか脱落してしまう。「業務が忙しい」「家族のケアが」「体調が」と、あなたを挫折させるカベはいくらでも立ちはだかってきます。それは、社会人ならみんな同じ。その先を分けるのは「カベ」にたちむかうカラダができているかどうかなのです。

また運動の例を出しますが、あなたが糖尿病予備軍と診断されて、ジョギングを始めたとしましょう。最初はおっくうでも、いやいや続けているうちに、走ることが日課になってくる。そうするとランニングが脳に報酬を与えるようになり(エンドルフィンなどの快楽物質が出る)、走ることに「ハマっていく」ようになる。

ここまではいいんですが、「走るためのカラダ」ができていないままに走行距離を伸ばしていってしまうと、あるところでパキーーーンと故障します。たいていは膝や脛や足首。腰や股関節をやっちゃう方もいます。健康づくりとおもって始めたランニングでカラダを壊す。本末転倒ですよね。

リ・スキリングに立ち向かい、しかし途中で挫折してしまう方も、これと似ています。根性がないとか、運がないとかではなく、誰にでも襲ってくる「カベ」に対処するためのカラダができていないのが原因なのです。

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ですから、過去に資格受験の挫折歴がある方も、決して自分を恥じる必要はありません。ただの準備不足だったのですから。

では、どんな準備をすればよかったのか?それが≪時短≫なんです。個人的に≪時短≫をすすめることで、「次々とおそってくる『カベ』にかかわらず、厳しい受験トレーニングを長く続けることができるカラダ」の準備ができるのです。

個人的≪時短≫とは、生活の断捨離といってもいいかもしれません。

■あなたの生活の中で、あなたが「時間を投資」していることは何ですか?それらは、投資するに値することですか?
■電車の中や運転中など、身動きがとれない時間に、あなたの耳は何を聴いていますか?それらは、聴く時間を投資する価値がありますか?
■おカネをかけることで、時間を取り戻せることはありませんか?衣服を洗うには自動洗濯機を使いますね。それは手で洗うよりラクだから、というより、洗濯機が働いている時間をほかのことに使えるからではありませんか?ご飯を炊くのも同じですよね。であるなら、なぜ食器は機械を使わずに手で洗っているのですか?なぜ乾燥器を使わずに洗濯物を干すのですか?
■そしてこれが最重要なのですが、フッと数分間の空き時間(すきま時間)ができたとき、あなたはスマホをあけて、それで何をしていますか?

などなど。

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要するに、常に「自分はいま、時間をムダにしているのではないか?」と気にする習慣をつけること。それを気にし続けてもアタマが疲れないこと。これがすべての基本になるわけです。

そういう意識を持続できるようになると、行動パターンが自然と変わります。繰り返しますがこれを逆にして「行動パターンを変えれば意識が変わる」と思っても続かない。三日坊主は、あなたの意志が弱いからではないんです。時短断捨離というプロセスを踏まずに行動を起こしてしまったから、カラダが「面従腹背」の反乱を起こしているんです。そう、組織を変えようとするときと一緒ですね。

行動パターンが変わってくると、他人からは「意識高いね〜」などとからかわれるようになるかもしれません。喜ばしいことです。あなたの時短断捨離をディスる方々に合わせて時間をムダにしたところで、その方々があなたの将来にコミットしてくれる(面倒みてくれる)わけではありませんからね。

ムダな作業の時間を減らす。
ムダなコンテンツ視聴の時間を減らす。
ムダかもしれない「つきあい」の時間を減らす。

前々からこのコラムで申し上げているとおり、けっこう厳しいリセッションに襲われる気配が、いよいよ高まってきました。そうなってからいきなり全力で逃げようとすると、ココロにケガをするような事態に陥りかねない。まだ少しだけ余裕がある今、≪時短≫でカラダつくりを始めておきましょう。大切な方々とともにサバイバルするために。


TAC USCPA講座 / 草野龍太郎 講師
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