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経理部門を率いるあなたが、どうやら本気で「時短」に取り組もうとしているらしい。そこにようやく気がついた経理メンバーの方々は、徹底的な反対や抵抗を始めます。
とはいえ、メンバーの大部分を占めるのは、「コトを荒立てることなく反対したい」方々です。
この方々は、あなたの呼びかけに対して表立って反対の声をあげることはしません。なんなら「わかりました、やります」と返事したりします。
しかし、けっしてやらないのです。これが「面従・腹背」です。
これまでも何回か、経理の《えらい人》が「時短をしよう、ムダをなくそう」と呼びかけたことがあった。しかしいつも最初だけ。何週間か経つと、《えらい人》は何も言わなくなる。今回も、それをじっと待っていれば良い。
こういう「生活の知恵」は、企業のチームにはたいていどこにでもあるものです。とくに経理チームには必ずある。ほかのチームと異なり経理チームは「再編」される頻度が少ないので、秘伝のタレのように「知恵」が熟成されていたりします。
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これらの方々の「面従腹背」に対しては、とても大切なことがあります。
それは「打つ手はない」ということです。
メンバーの方々は懸命なのです。安定した会社生活を守り抜くために必死なのです。「黙っている」「従うふりだけする」というのは、ラクをしているとかサボっているようにしか見えないかもしれませんが、メンバーのみなさんは「全力で、何もしない」のです。
その努力を、けっして軽く見てはいけません。「面従腹背」のみなさんに対して、「2-3回、しっかり話せばわかる」などと思ったら大間違いです。かれらは「わかっている」のです。その上で「よくわからないフリ」をしているのですから。
また、あなたの「チカラ」でガツンと動かせるなどとおもったら、勘違いもはなはだしい。あなたがそう勘違いするのを、メンバーのみなさんは待ち構えています。そうしてひとたびあなたが「ガツン」をしでかしたら、あなたのやり方が乱暴である、とコンプライアンスラインに訴えられておわりです。
「面従腹背」する方々に、正面からぶつかっても、ダメなのです。こうしてあなたの先輩たちも、みな「数週間で撤退」していったのです。
では、どうすればよいのか?
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メンバーの中には、はっきりと反対の声を挙げたい方もおられます。
多くのメンバーさんが「生活の知恵」に従っている中で、それをもどかしいと感じている方ですね。
あなたは、むしろこういう方こそが頼りになるのではないか?と思うかもしれません。よくドラマやマンガで、反対派の方が一番の理解者・みかたになってくれる、なんてことがよく起きます。
しかしここは、現実の社会です。たしかに、声をあげる方がみかたになってくれることはあるかもしれません。しかし、見極めなければいけないのは、その方がメンバーの中でどういう位置にいるか、ということです。
今回、その方はあなたに反対の声をあげましたが、ひょっとしたら、ひごろから他のメンバーの仕事に対しても「声をあげて」いる方かもしれないのです。「正論をぶつけて」いる方かもしれないのです。
あなたの部下さんに限らず、ほとんどの日本人は、自分の仕事について「声をあげられる」と、それを人格の否定だと感じるものです。激しく議論をしても人間関係に影響しないなんて方は、まずおられません。
ですので、「面従腹背」をよしとせずにあなたに声を挙げてきた方が、かりに味方になったとすると、もしかしたらかえってあなたの時短戦略の妨げになってしまうかもしれないのです。
TAC USCPA講座 / 草野 龍太郎 講師