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前回、経理チームを率いているあなたが、チームの時短を達成しなければならなくなったとしたら、、、という話をしました。まず最初に「謝るところ」から始めましょうと。
この国では、謝るところからはじめるとコミュニケーションがスムースに運ぶことがとても多いです。
「べつに悪いことしているわけでもないのに、なんで謝んなきゃいけないの?わけわかんない」
そう思われた読者もおられたとおもいますが、モノは試し、ぜひやってみてください。
どうしても謝るところから始めることに抵抗がある方も、少なくとも「正論から始める」ことだけは避けたほうがよいです。そもそもこの国で他人に動いていただくには「論理」「議論」など「論」は避けたほうがよいですが、なかでも「正論」は極力発言しないに限ります。
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ということで、みなさんが「謝ること」から始めることに合意してくださったとしましょう。それでは何を謝るか?つまり、どのようなムダを、あなた(というか会社)が、部下のみなさんに強いてきたことをお詫びしますか?
私のおすすめは、まずは、
「経理業務でなにかあったらどうするんだ」
「経理業務にリスクは認めない」
という「ゼロリスク思想」を組織中にまん延させてきたこと、これをいちばんにあやまるのが良いと思います。
何か悪いことが「起きること」を許さない、という空気で社内を満たすことによって、従業員のみなさんも、なにごとも「起こさない」「起こしてはいけない」という気持ちになっているはずです。
そして従業員さん同士お互いに、「なにごとも新たに起こしてはいけない」という同調圧力をかけあっているのではないでしょうか。
あなたをはじめ幹部の方々が、社内セレモニーであいさつされることがありますね。
1、環境は激変していて、競争も激化しており、変化しないと生き残りが難しい
2、前例にとらわれることなく、また失敗をおそれず、新しい取り組みにチャレンジしていこう
3、従業員ひとり一人に、自分で考える経営者マインドが求められている
みたいな挨拶をされても、部下の経理プロフェショナルのみなさんは本気にしないわけです。あなたが口頭で何をおっしゃろうと、職場の空気は「ゼロリスクじゃないとダメ」一色になっているからです。
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ここで大切なことは、いままでの「ゼロリスク絶対主義」を謝るからといって、なにか新しいことをどんどんイノベーションしてほしい!と部下の方々に訴えるというわけではない、ということです。
新しいことを創り出す以前に、まず、従業員のみなさんが「ゼロリスク」のために日々くりかえしている膨大な作業を、おおはばに削減するのです。
そういう作業の多くは、かつて「事故」をおこしたたびに「再発防止策」として追加され続けてきたもの。しかしいまとなっては形骸化し、「なんでこんなことしなきゃいけないの?」「知らないよ、決まりだからだろ」ということで惰性で続いている。
こういう業務をどんどん削減するように、みなさんが頭を下げてお願いするのです。
TAC USCPA講座 / 草野 龍太郎 講師