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2022/08/30
成功し続ける方法/491回<業務時間の短縮テクニック(3)>
#491:業務時間の短縮テクニック(3)


仮に皆さんが、経理部門の責任者的な重い役職についたものの、実際に経理担当からの「叩き上げ」ではないために、

部下の皆さんの「実務」については殆ど何も知らないと仮定しましょう。

(伝統的な日本組織(JTC)ではよくあることだと思います。

JTCは、幹部職員を「ジェネラリスト」として育成する風習が残っているため、「会社で偉くなるための作法」には通じているけれども「現場の実務」にはまったく土地勘がない、
という方を「組織の責任者」に任命して経験を積ませるからです。)

そして、そんなあなたに経営陣から「経理部門の時短を達成せよ」という指示が降りてきたとしましょう。もちろん削減できた時間のKPIつきで、です。

そのときあなたが【してはいけないこと】は、ズバリ、現場の部下さんに対してこう指示することです。

「皆さんの業務のうち、削減できる『ムダな業務』をリストアップしてください」

・・・・・・

こう言われてしまうと、現場の方々は、身動きが取れなくなる訳です。なぜなら、今まで毎日毎日自分たちがやってきた実務の中に「削減できるムダがあった」と自認することになるからです。

それも「前々からムダだな〜と思っていた」という業務があればあるほど、言いにくくなります。今度は「ムダだとわかっていたのにそれを放置していた」という「罪状」まで加わりかねないからです。

「ムダを列挙せよ」と、偉いあなたから突きつけられた「現場」の皆さんの心境は、もっと複雑なものだと思います。

それも、難しい資格は持っているのかも知れないが「現場」のことを何一つご存知ないあなたが、経営陣に対して点数を稼ぐためだけに、自分たちの「ムダ」を吐き出さなければならないなんて。

・・・・・・

こうなると「現場」の皆さんは一致団結します。こんなときに偉いあなたに対して取る態度は決まっています。

それは「面従腹背(めんじゅうふくはい)」です。

返事は「ハイ、わかりました、『ムダ』をリストアップします」としておきながら、なんだかんだ理由をつけて従わない。

リストを出してきたとしても、なんだか実効性があるんだかないんだかわからないようなものばかり。

そうこうしているうちに決算期に入ったり、何か緊急事態が起きたりして、あなた(や経営陣)が時短「なんか」から関心がなくなるのを、じーっと待ちます。

いままでも偉い方々は思いつきで何度か「ムダをリストアップしろ」と仰り、そして時間が経つと忘れていきました。あなたもきっとそうだろうと思われているわけです。

・・・・・・

しかし、あなた(の上の経営陣)が、「こんどはこれまでと違い、本当に時短をやりとげようと思っている」としましょう。

つまり、いままでのように「面従腹背」をされただけでは困る、ということだとしましょう。

もし本当にそうであるなら、あなたは最初に「ムダをリストアップしろ」などという乱暴な命令を出してはいけません。かわりに、まずは「謝る」ところから始めるべきなのです。

「皆さんが、会社(つまり経営陣や、もっと言えばあなた自身)から強要されている業務のうちで、『これはムダだなあ』とお感じになるものが、たくさんあると思います。

そのことを、心からお詫びします。これまで放置してきたのは我々の怠慢でした。

経営陣も、今回はそういうムダの強要を、できるだけなくしたいと言っています。

どうか忌憚も遠慮もなく、みなさんが『ムダを強いられている』とお感じの社内業務を、リストアップしてください」

・・・・・・

恐らくほとんどのJTCさんでは、いやどんな企業さんであっても、あなたが部下さんにそんな発言をすることを許す経営トップは、殆どおられないとは思います。

それだけに、もしもあなたから(もしくは経営陣から直々に)こういう「謝罪」から始まることはを聞くことができたら、これは現場の皆さんも

「今度は、ひょっとしたら本気なのかも?」と思ってくださるかもしれません。

そして、恐る恐る「忖度なしの『ムダな社内業務』リスト」を、あなたに提出してくださるかもしれません。

そこであなた(や経営陣)が、そのリストに真摯に向き合い、極力そのリストを短くすることに全力をつくしたとすれば、そこに初めて「信頼関係」が芽生えるかもしれない。

そうすると、現場の皆さんのほうから、「実は自分たちの長年のやり方の中にも、我ながら『ムダだなあ』と思ってきたものがある」という声が届くようになります。

そうなったら、あなたが率いる経理部門は、有意義な時短施策を実行できる土壌が育ち始めたと言うことです。

というか、「ただの偉い人」に過ぎなかったあなたが、本当に「経理部門を率いる」状態が始まるといってもいいかもしれません。


TAC USCPA講座 / 草野 龍太郎 講師
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