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先週の続き。
本格的にインフレになろうとしている。身近なところでも値上げが相次いでいる。
それも、残念ながらデマンドに牽引された「よいインフレ」ではなく、コストアップによる「悪いインフレ」だ。
スタグネーション(景気低迷)とインフレーションが同時に迫っている(合成してスタグフレーションと言われる)。
日本人は40年近くよいインフレも悪いインフレも経験がない。
このため、経営者も従業員もそろって、コスパ重視の「安く!安く!!もっと安くしてよ!!!」という意識の方々ばかりの国になってしまった。
「もっと安くできるよね?」という言葉は、ヒトの労働の価値を小さく見ているということであり、価値の測定を「市場最低価格がどうか」でしか判定する能力がないということ。
他者に対して「きちんと払うからその分しっかり仕事してください」という気持ちがない方々は、自分の仕事についても「きちんと払ってください」とは言えないのだろう。
これまで長く続いたデフレ時代はそれで十分通用した。というより、コスパ至上主義の方々ばかりがどんどん<<えらく>>なって行った。
そこに、数十年ぶりのインフレーションがやってくる。ほとんどの人が未経験の「モノの値段が上がっていく」社会だ。
多くの企業さんが、コストを売価に転嫁できず苦戦することになるかもしれない。
社会人になって以来ずっと、他社さんにも自社内でも「もっと値下げできますよね?」と繰り返し続けてきた方々が、突然お客様に「値上げさせてください」と言えるだろうか?
価格転嫁問題だけではない。新しい事業やサービスの開発も難しくなるかもしれない。
とりわけ、観光など「人的サービス」をフル活用する経営者さんがデフレコスパ意識のままだったら、どうだろう?
その企業が作る施設は、海外はもちろんドメスティック富裕層にとってもつまらない場所になるだろう。
そして、同じデフレコスパ主義(安ければ良い)の方々を集客することになるだろう。
しかし、デフレコスパの方々は、常によりコスパがよさそうな場所をハンティングしている(少しでも安いチラシを見るとそのスーパーに買い出しに行くようなこと)ので、簡単に去られることになる。
FP&Aの皆さんも、職場の事業・サービス開発をアシストする機会があると思う。いつまでも以前と同様に
「安く!安く!!もっと安くなりますよね?」
と言っているだけで、「コストを低減して貢献しておる!」と思い込んでいると、「あの経理の人はデフレコスパ主義だ」「時代遅れで痛い」と評価されてしまうかもしれない。
TAC USCPA講座 草野龍太郎 講師