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ピカソさんがレストランで「絵を描いて」と頼まれ、ナフキンにサラサラと描いてあげて「はい、100万円」みたいに言ったら予想通り、
「ピカソさん、あなた30秒の作業でその金額を取るのか」との返答。
ピカソさん「この絵を描けるようになるまで30年かかった、だから制作期間は30年と30秒です。100万円では安過ぎましたか?」
.....あちこちに、「オレは原価知ってるんだぞ、もっと安くできるだろう」と仰る方がいます。
皆さんもプロとしてビジネスしていると、こういうお客様に頻繁に遭遇しますよね。皆さんの仕事の成果を皆さんの作業時間でしか判断できない方々。
クライアントのご質問に皆さんが3分で答えたとします。じゃあフィーは180秒分か、というとそんなはずはない。
その回答ができるようになるまでの何千時間にもわたるトレーニングのおかげで、その回答ができるわけですからね。
資格試験を突破するだけでも、およそ1,000時間を投資しているのです。皆さんのプロフェッショナルとしての仕事の「原価」は、膨大なわけです。
決して安売りしてはいけないのはもちろんのこと、切り売りもしてはいけません。
切り売りしないというのは、例えて言えば「お味噌汁は要らないと仰っても、その分まけることはありませんよ」というようなこと。
こんな話があります。ある鉄道会社さんの車両には、グローバル航空会社の『ファーストクラス』を真似たクラスの客席が提供されている。
そのクラスの客席は、路線によって「タダの飲食サービス」がついていたり、いなかったりする。
で、「タダの飲食サービスがない」場合は、2,000円お安くなる。
こういう商売をしてはいけない、ということです。なんでかと言うと、そういう売り方をしてしまうと、
・「クラス」そのもののステータスに対価を払うのではないお客様
・あくまで「ビール何本飲めば普通席との差額の元が取れるか」。その原価計算で、頭の中が一杯であるお客様
が集まってしまうからです。
グローバルエアラインには、『ファーストクラスの客』という層があります。
機材ぐりなどの運用上、ファーストクラス用の席をビジネスクラス席やプレミアムエコノミー席として埋めてしまうことはあっても、
エアラインは『飲食を抜いたりダウングレードしたりして、その分数千円値下げしたファーストクラス』という売り方は、決してしない。
あくまで「クラスを買うお客様」を集めようとしているからです。
もちろん、そういうマーケティングが、これからの大不況の時代にも引き続き通用するかはわかりません。
「タダ酒をたくさん飲んで差額の元をとろうとする方」、つまり「オレは原価知ってるんだぞ、安くしろ」というお客様でも大歓迎!という戦略も大いにアリだと思います。
草龍が申し上げたいことは、最初からそのつもりでやるならよいですよと。
ですが、そんなつもりなく「いつかファーストクラスのお客様に最高のサービスを提供したい!」
とはりきって何千時間もトレーニングしてきたというのに、いつまでも「安くしろ!」のお客様ばかりという状態に陥ってしまっているなら、
それはご自身のマーケティングが間違ってるんじゃないですか?ということです。
「安くしろと迫るお客様」という言い方をしてきましたが、これ、あなたとあなたの雇用主の関係にもあてはまる話です。
TAC USCPA講座 草野龍太郎 講師