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#472 まるでわかっていなくても「わかりました」と発声してしまう人
日本人同士のコミュニケーションは、「一回の発言ですべてが伝わる」ことが重要です。
もともと議論のために話しているのではないからね。逆に「皆さんに対して特に異論反論はありませんよ」と示しているだけ、だからです。
「だよねー」など、何らか曖昧なことをフワーっと発音しておく。それでよいし、それ以外はダメ絶対。
「子どもの頃から『わからない』と言うと叱られるから、わからなくても『わかりました』と答えておこう」
という方々が、とてもたくさんおられる。
あなたもそんな一人だとしよう。しかもお仕事柄、「外国人とグローバル言語(例えば英語)で議論」しなければならないことになっちゃったとしましょう。
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もちろんあなたは、まずは日本ビジネスパーソン得意の「この件は持ち帰って検討する」で逃げようとする。しかし、相手は怒るまえに驚く。そしてやっぱり怒る。
「決定権がない人が、わたしに時間をこんなに費やさせたのか!?」
...えっ、日本の企業からの出張者で、決定権がある人なんているわけないよ。。。
「本社で検討するためのお使いだと?あなたは<<検討使>>か??」
...す、すごいギャグだな。この外国人さん、どんだけ日本史勉強してるの。。。
「本社で検討するだと?じゃあ、本社の決定権ある方をオンライン会議に呼んでくださいよ!ナウ!!」
...うう、本社の役員にだって、「決定権ある人」なんかひとりもいないんだよ、日本企業には!
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というわけで追い込まれたあなたは、外国人とグローバル言語(たとえば英語)で、議論しなければならない羽目に陥ったとしよう。
しかしあなたはうまいことコミュニケーションが取れない。
その原因の1つは、
「一回の発言で全てを伝えようとしている」
からかもしれない。
「外国人との外国語での議論」なのに、「日本人同士の日本語での『だよねー』と同じように、一回の曖昧な発音で終わらせられないかな。。。
あなただけではない。多くの日本語ネイティブは、めずらしく大量情報を相手に伝えようとした場合、
「いつものとおり」一回の発言で10なら10の情報ぜんぶを一気に、相手に伝えようとする。そうすると、
「こんなことがありました。『あと〜』、こんなこともありました。『あと〜』、こんな.....」
のように、「あと〜、あと〜」で際限なくダラダラしゃべり続けることになる。
子どものときから、ことばを「だよねー」にしか使っていないから、仕方がない。ボールは投げるモノでしょ?足で蹴るなんてやったことない!みたいな感じね。
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ネイティブの日本語でもそうなっちゃうのです。ましてや、それをグローバル言語で行うなどとても大変。
ドタンバのこんなとき、慣れない英語で議論反論をするためには、心がけるべきことはただ一つ。話を箇条書きにするしかありません。
「今日はお伝えしたいことが10あります。整理してきたので列挙しますね。まずひとつめ...」
みたいに話すしかない。
あなたの、「一回に押し込んだ」フワーっとした長〜いお話しでは、何も伝わらない。他人の脳に「だよね〜」以外の何かが伝わることは、ネバーありえないのです。
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「ひとことで同意を示すだけ」の方々がいちばん困るのは、「不同意を穏やかに表現する方法」を知らないことです。
冒頭に書いたとおり、
「子どもの頃から『わからない』と言うと叱られるから、わからなくても『わかりました』と答えてしまう」
という方々は、とても多い。あなたのチームにも何割か必ずおられるはず、というくらいに多いです。
まずはそのような、「わかったと言うけど何もわかってない方々」の存在を認めることです。リスクから目を逸らすのではなく、リスクの軽減を図りましょう。
手段はカンタンです。あなたの指示を、かならず復唱していただくことです。
わからなくても『わかりました』と言うてしまう人は、その復唱内容が正しいことはまずありません。
そして【ここが重要ですが】、一度の指摘で「こんどこそわかりました!すみませんでした」と返事があったときこそ、もう一度復唱してもらうことです。
すると、またもなにもわかっていない。
「これ以上叱られたくないから、全力で『わかったわかったわかりましたすみません』と言って解放してもらう」
という状態だからです。むしろ一回目よりもあなたの話を聞いてないかもしれん。。。
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というわけで、日本人が「不同意」「反論」を穏やかにコミュニケーションするのは難しい、それは慣れてないからだ、というお話でした。
これ、資格試験の受講生さんでも「あるある」なんですよね。わかってなくても「まあいいか〜」で済ませてしまう。
あなたご自身は、いつ何時「外国人と、グローバル言語で、バチバチに異論をぶつけ合う」ことになるかもしれません。
今から訓練をしておくとよいですね。そのためにも、わからないことに「えーと、わかんないです」と穏やかにコミュニケーションする訓練から、始めましょう。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師