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2022/03/23
成功し続ける方法/471回<失われた30年>
#471:失われた30年


草龍は先週、「今世紀はじめて」スキー場に行きました。

新潟県、妙高山麓。およそ30年前、某リッチな方が、「空いてるスキー場がほしい」と造ってしまったというスキーリゾート。当時、スキー場はどこに行っても激混みだったのです。

しかし初年度から大赤字。06年に破綻してしまう。それを17年12月に韓国資本さんが復活させた。

さて草龍は、四半世紀ぶりにスキーウエアを着て、レンタルしたブーツを履く。そして、これもレンタルしたスキー板をみると、

.....短い。

レンタル係の方が「あー、聞いたことあります!むかしは『身長よりちょい長いくらい』だったそうですね。いまは身長マイナス20センチが基準ですよ」

しかも、板はヒョータンを長く伸ばしたかのように括れている。なるほど、このエッジに乗れば勝手に曲がれるってわけかい。

久しぶりの滑走でしたが、スイスイ滑れました。道具の進化、恐るべし。

ふと周りをみると、みんなGoProを持っている。そりゃそうだ、スマホで撮るには一々手袋を外さなきゃいけない。なるほどなあ。

季節外れの降雪にも恵まれ、たいへんエンジョイしました。

帰りの上越妙高駅で知りました。

JR東日本さんの 「SKI SKIキャンペーン」も、スタートしたのは1981年。まさに草龍が高校でスキーを始めた頃じゃないか。

それは、日本のモノづくりが世界を席巻していた時期です。米で『ジャパンアズNo. 1』という本が出たのが1979年。

当時はバブル経済の前夜であり、スキーだけでなくゴルフや海外旅行など、「レジャー」が大変なブームになったわけです。

『No. 1』と褒め称えられた日本経済は、すっかり勘違い。「米欧に挑戦して追い抜く」という姿勢を忘れ、いつしか「雑なガイジンに日本の素晴らしさを教えてやる」となりました。

その間、米欧のエリートは必死に日本を研究。彼らは太平洋戦争のときも日本を徹底研究しました(敵性語の英語を禁止した大日本帝国とは、ちょい方針が違います)。

有名ビジネススクールに「日本式経営研究講座」が続々と出来ました。しかも日本企業の寄付で!

かれらは日本の生産方式や在庫管理や品質管理を学び、それらをどうやったら自国で実現できるかを必死に考えました。

その結論が

「日本人のように『ひとりの多能工が、いわれなくても気を利かせて動く』というのを再現するのは、困難だ。

代わりに、『多くの単能工が、決して気を利かせなくてよいから、言われたことを言われた通りにやる』ということを徹底しよう」

ということで、改めてテイラー式生産管理(チャプリン『モダンタイムズ』の世界)を徹底することになりました。

更に、生産性をきっちりメジャメント(計測)し、可視化すること、

そしてそのメジャメント結果をリアルタイムで経営陣にレポーティングすること、などが推進されました。

SAPさんやOracleさんなどの「ERP」は、こうしたマネジメントを可能にするために開発され、導入され、発達してきたのです。

片や「No. 1」の称号に酔いしれた日本は、バブル崩壊から「安く安く安く」のコストカット至上主義に転落。

今や日本式経営研究講座など影も形もなく、各国の財務当局が「日本みたいな慢性デフレ(ジャパナイゼーション)に陥らないためにどーするか」と奮闘する有様です。

巨費を投じて欧米のERPを導入した企業さんも、殆どは「高級な会計帳簿」としてしか使えていないんじゃないか、という説もあります。もちろん、皆さんのお勤め先だけは違うと思いますが。

その差は現在のデジタライゼーションにも大きく現れていますね。

今回伺ったスキーリゾートは、数年前に外資財閥さんが新装してくれたので、全エリアキャッシュレスでしたし、リフト券もタッチレスのセンサー式でした。

しかし、多くのスキー場では、長期のスキー客減少からのコロナ禍ということもあって、デジタル投資は遅れている。

いまだに「コインロッカーで百円玉が3つ要る」「レストランの食券機は千円札しか受け付けない」、そして「リフト券は紙で、係の人が目視」だったりするそうです。

「安く安く、もっと安く」で、すっかり老朽化した日本経済。「デジタルが苦手な人をメインに」ですっかり停滞した日本社会。

そしてこの度、そこに襲いかかる「円安x資源高」。これからわれわれは強烈なコストプッシュインフレ(スタグフレーション)に見舞われるかもしれませんね。

来冬のリフト1日券は何万円かに値上がりしてたりして。

長いリフトで隣り合った若い男性とお話ししました。中3だそうで、40代のご両親が「僕をおいて、上の方の上級者コースでガンガン滑ってる」と笑っていました。

「ぼくの両親は『バブル世代』だから、若い頃スキーをめちゃくちゃやったらしいです。(草龍も)そうでしたか?」

.....えーとね、そうなんだけど、正確に言うとキミのご両親は「バブル世代」じゃないよ。リアルバブルの草龍より、10個も下でいらっしゃるんだからね.....

とは、言いませんでした。さすがの長いリフトも、終点に着いちゃったしね。


TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師
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