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#466 <<正論 >>こそ気をつけて!
IRや統合報告など、会計をベースとしたコミュニケーションを担当する皆さん。一度だけで良いので考えてみてください。
人は、どんな相手に対してなら「もっと話を聞きたい」と思うでしょうか?
自分の都合で勝手に距離を詰めてくる相手の話を、「もっと聞きたい」と思うものでしょうか??
考えて見ますと、「もっと話を聞きたい!距離を縮めたい!」と決めるのは、あくまで自分自身です。決して迫ってくる相手が決めるのではない。
ですけど、そのことを忘れている(もしくはそもそも知らない)相手さんがいます。
そういう方々が発するコミュニケーションは、「あなたは私の話を聞くべきである」という前提の上に立っている。勝手だなあ。
・あなたが聞きたくもない話を「こんなためになる話、あなたにも知ってほしいから」、とあなたに言う
・あなたが言ってほしくないことを「こんなこと言いたくないけど心を鬼にして」あなたに言う
・あなたはその相手と親しくなる気がないのに「我々はもっと親しくなるべき」とばかり、あなたに迫る
相手さんは、「あなたが相手の話を聞くべきである」と確信しています。そういうところから、あなたと相手さんの関係は難しくなっていきます。
「他人との距離の取り方」ほど大切なことはありません。それは、その「他人」さんを尊重するところから始まります。
「話せばわかる」「だからまず距離をグッと詰めて、とにかくコミュニケーション!」などと言うのは、相手の尊重を忘れ、自分のことしか考えていない。
本当に未熟としか言いようがありません。
で、これは個人と個人の間に限らないのです。法人と個人、法人と法人も一緒です。結局法人といっても担当者は個人ですから。
「自社のことを、わかってもらいたい」
そんな発想でコミュニケーションを発するのは、上記の「未熟なあまり、他者を尊重できない個人」と変わりません。
法人でも個人でも、他者を説得したい、他者を自社の思い通りに動かしたい、他者にもっと好かれたい、そういう「欲」があるのは当然です。そこは否定しない。
大事なのは、そういう欲があればあるほど、相手との距離を大切にすること。むやみに距離を詰めようとしないことです。
とりわけ、あなた(たち)が発しようとしているコンテンツ(内容)が、<<正論 >>である場合は、もう本当に注意してください。
「あなたは、わたし(たち)の<<正論 >>を聞くべきです」というコミュニケーションだけは、厳に避けなければいけません。
皆さんは<<正しい>>のでしょう。相手さんは<<間違っている >>のでしょう。
それでも、いや、そういう時こそ、皆さんは、その<<間違っている >>相手さんを尊重し、「距離を詰めすぎる」ことがないようにしないといけないのです。
会計、監査、税務、法務..... われわれプロフェッショナルは<<正しいこと >>を必死に学び、<<間違っている >>クライアントを<<正す >>ことで価値を認めて頂いています。
だからといって、いや、だからこそ、<<正論 >><<正しいこと >>を申し上げなければならない時に、
つい張り切って(勘違いして)(思い上がって)相手さまとの「距離を詰めて話す」のは、ダメ絶対なのです。
知らなくても試験に受かる話ですが、いつか申し上げておきたいと思っておりましたので、
<<正論 >>申し上げておきます!
TAC USCPA講座/草野 龍太郎 講師