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459 先端と洗練が足りない社会での役割
いまの日本には、お金はけっこうあるが、先端研究開発力と、洗練された社会システムが足りていない。
このため、いろいろなモノやサービスを外国から買わなければならなくなっている。天然資源がないのはもともとであるが、先端技術と洗練されたシステムで生産される製品やサービスも、自国では作れないということである。
例えば日本には、猛スピードでワクチンを開発できる体制がない。治験参加者を大量に確保するのが難しいというし、ITによる大規模な管理も存在しない。
このため、もしいつか「致死率数十%」のような感染症が攻めてきても、日本は先進国よりワクチン接種が遅くなるかもしれない。
また最近「尿素水」が入手困難になっている。日本への輸出国が供給量を大幅に絞っているからだ。
これによりディーゼルエンジン車が動かせなくなる恐れがあり、そうなるとトラック物流が止まってしまう。
中小の運送会社さんたちの「尿素水」サプライチェーンは外国からの輸入に依存しているが、世界的に取り合いになっている影響が日本にも及んでいる。
世界的に不足といえば、半導体も大変な供給不足である。しかし、最先端の微小半導体も、もはや日本では作ることができない。国としてそこへの投資をあきらめているからだ。
80年前の1941年12月、日本は、先端技術と洗練されたシステムがなにもない状態で大国アメリカに宣戦布告した。
4年後に敗戦してアメリカに占領されたが、「たまたま」そのアメリカが日本の近隣国の多くと深刻な対立関係となった。そこで日本はアメリカの重要拠点となった。
その好影響もあって(それが全てではないが)、1980年代ころまでは、日本には当時の先端技術と洗練されたシステムがあった。
ただしそれが成功しすぎたために、他国が日本を徹底研究し、追撃し、追い抜いていくというのに、「当時の」システムを変えようとはしなかった。
たとえば皆さんご存知のSAPさんやオラクルさんなどの「ERP」は、米欧企業の日本追撃のための一手段である。
このシステムによって「経営会計」を実現し、価値を産む製品・価値を産む部門やチーム・価値を産むメンバーを選別して集中的に投資する。価値を産まない製品や部門やメンバーは、改善の見込みがないなら整理する。
その後多くの日本企業も「ERP」を「導入」したものの、たいていは単なる会計ソフトとしてしか使われていない。
そもそも「経営会計」を「管理会計」と誤訳したままのところから、先端も洗練も放棄していまに至った。「経営」という言葉すらも、リスクテイクではなくコストカットを意味するようになって久しい。
そんな中、今後脱炭素で「ガソリンエンジン産業」が縮退すると、ほんとうに大失業ジャパンに陥る。そうなると、火力発電の燃料代も払えなくなりかねない。
過去半世紀、日本には「経営」「企画」「計画」「管理」などの「高級な仕事」が存在を許される余裕があった。その反対に、手を動かす・汗を流す・肉体的に疲れる.....などの「作業」のお仕事は敬遠されていった。
しかし今、「高級な仕事」は我々目前から急速に消えてなくなっている。高級さには、先端技術と洗練されたシステムが必須なのだが、コストカットしかしてこなかった我々には、先端も洗練もない。少なくとも当面はそうだ。
すでに動き出している方々は、そこに気がついている。
・海外からアウトソースを受ける
・海外への出稼ぎを、リモートで国内でやる
そういう仕事の椅子取りゲームが始まっている。海外共通語である「英語」と「会計」を知っている皆さんの価値は、皆さんが思っている以上に高い。
縮退コストカットしかすることが残っていない組織での「企画」「管理」「計画」の他にも、皆さんが貢献できることは、たくさんある。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師