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2021/12/01
成功し続ける方法/457回 <<起業家 >>さんと 働く
457 <<起業家 >>さんと 働く


Twitterを2006年に創業したジャック・ドーシーさんが、「ついに」同社のCEOを退任した。

ドーシーさんは、Twitterの全社員宛のお別れメールで、

「オレは、Twitter社が、脱・創業者(つまり「脱・オレ」)することを目指してハードワークしてきた!創業者から離れられないような企業はダメだ!

オレはすっぱり辞めて、あれこれ影響力を及ぼすようなことはしない!」

などと書いておられた。いやー、いろんな意味で勉強になりますね。

さて話は変わり、というか変わらないのだが、、、

『Forbes JAPAN』という雑誌の最新号は毎年恒例の「起業家特集」号である。今年も新進気鋭の<<起業家>>がたくさん登場している。その創造力<<アイデア>>と行動力の凄まじさにはいつも圧倒される。

宇宙空間で働けるロボット
核融合炉エネルギー技術
新しい海外旅行の姿

などなど、大いに刺激を受ける。じぶんも何かを創り出したくなる。

誌面上の彼らのポートレートは、ほとんど笑っていない。カメラマンさんいわく、撮影にあたって「日々必死にビジョンの実現に生きる誠実さを活写したい」とだけリクエストし、笑顔をくださいとは言わなかったと説明している。

「この起業家たちは、迎合のための笑いが必要ない人たちなのだ」と。ちょっと言い過ぎな気もするが、まあそれはともかくとして.....

こうした<<起業家>>さんたちが起こした事業は、その何%かが生き残り、大きくなっていく。読者の中でも、そうした<<スタートアップ>>組織で働く方が、どんどん増えていると思う。

現に、多くの「超優秀な」学生さん・若者さんたちが、既存の大企業への就職ならぬ「就社」拒み、クールな<<起業家>>さんが率いるイケてる<<スタートアップ>>へとなだれ込んでいる。

そうやって日々大きくなっていく若い組織で、経理業務や内部統制業務などに携わる皆さん。わたしも何社も見てきていますので、皆さんのご苦労をお察しします。

日ごろ痛感しているのではないですか?ご自分の組織に本当に必要なのは、「とびきり優秀なスター」ばかりではないということを。皆さんが仕える<起業家>>さんに、皆さんが一番望むことは、皆さんのような

<<ルールをきちんと守る人>>

たち「も」集めてくれないかな。毎日そう思っておられるのでは?

もっと言うと、<<起業家>>さんがそろそろ「きちんとしたビジネスモデル」を設計してくれないかな、と心から願っておられるのではなかろうか。

皆さんのような人たちが、決められたルールに則った(のっとった)プロセスをこなしていれば、しっかりと業績が上がる。そういう組織へと変わってほしいですよね。

いつまで経っても

「われわれは大企業じゃないんだから、ルール守ってるようじゃ生き残れないんだよ!」

「クライアントの無理難題や、とんでもない例外リクエストを、実現してみせることこそサービスなんだよ!」

という<<スタートアップ>>状態から、本当に卒業してほしい。

しかし<<起業家>>さんたちは、得てして、いつまでもこの<<スタートアップ>>状態が続いたらいいな、と夢想しがちだ。

退屈なレガシー大企業と異なり、「自分のような優秀な人」が夜昼問わずワッサワサやってる、そんな活力にあふれた日々が続いてほしいと願いがちである。

どっちかというと、ルールに従う・プロセスをきちんとこなすというタイプの人々にはあまり関心がない。

「ときには『塀を乗り越えてでも』狙ったモノを奪い獲ってくるような人」がたくさんいてほしい、などと夢想しがち、それが<<起業家あるある>>だ。

メンバーの超絶な想像力と実行力を燃料として驀進(ばくしん)する組織。それは傍目(はため)にはカッコよく、「世界を変えたい」的な(若い)方々を惹きつける。

しかし、あまり長くは続きません。

理由は色々あるが、一つは「エゴが少ない人」が集まらないからだ。「他責がちではない人」「コミュニケーションコストが低い人」が居付かないと言ってもよい。

そういう人たちが集まって、(繰り返すが)ルールを守りプロセスを回していくようにならないと、事業は続かない。ルールとプロセス、つまり「再現性の高さ」がないと、「ふつうの方々」をたくさん巻き込むことができない。

<<起業家>>のなかで、そういうビジネスモデルを実現するところまで息長く走れるかたは、本当に一握りだけだ。

とくに昨今のように、レガシー大企業での就労経験がなく、学校から直接<<スタートアップ>>へと進んだ方々は、「ふつうの人々が日々再現し続ける事業」を肌で感じたことがない。

ということで、読者のみなさんのミッションは明確だ。<<起業家>>の方々の輝くような事業アイデアを、

「ふつうの人たちが<<ルール&プロセス>>で回せるシステマチックな事業」

へと変えていく。お仕えする<<起業家>>さんが<<経営者>>へと変わるよう伴走(伴奏)する。それが、この時代の経理・経営のプロフェッショナルとしての、真のバリューである。

ファンドさんから「資金調達」するための段取りをすることだけが、<<スタートアップのCFO>>さんの役割ではないんです。


TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師
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