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#456 英語「みたいに」話すには
読者の皆さんと違って、英語をはじめとする外国語に「まったく触れずに」暮らす方々がたくさんおられる。
もちろんそれは「良し悪し」や「優劣」ではない。ただの「違い」である。
ただ、日本語という「ことば」には大きな特徴がある。それは、
「ふわああああっとした感覚を伝えるように進化したことば」だということだ。
「うわ、これヤバみが」
「ほんと!まじやばくないすか?」
「たしかに。やば!」
もちろんどの国でもこういうやりとりはする。けれど他の国と異なり、普通日本語の会話では、こういう「ふわあああっとした感覚の伝達」以上に踏み込むことは少ない。
それは決して我々に「論理的な能力」がないからではない。我々は意図的に、理屈やデータを会話に持ち出さないように、つまり、「議論」に踏み込まないように、気をつけているのだ。
我々はわざと、英語などのように言葉を使うことをしない。「主語を明示し→動詞を明示し→そこに目的語や補語を足してさらに具体的に説明し、、、」という風には話さない。
そんなふうに話すと、とてもかしこまって改まってオフィシャルな感じがして、日常的な会話にならない。
さらに、具体的に数値や固有名詞を挙げたり、例を使って説明するのも出来れば避ける。そうすると話が具体的になってしまう、つまり「解像度」が上がってしまうからだ。
そういうのを我々は「相手との距離が遠い」と感じる。
「例の、あの話」で伝わる関係、つまりクローズなムラ社会が我々の基本である。
それに対して、論理的かつ具体的な話を始める人がいたら、我々は無意識のうちに要注意モードになる。なぜならその段階ですでに、
・相手がヨソモノであるか
・相手が何か新しい話を始めているか
どちらにしても、ムラの平和な日常にとって「異常」な事態が起きつつあるということなのだ。
我々ムラビトにとって、「異常」はたいてい「良いこと」ではない。とにかく自分が死ぬまでムラを変化しない・させないことが「是」だからだ。
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これに対し、英語による外国人さんたちの話は「解像度アップ」された具体的な話が多い。なんでこんなに延々と.....というくらい、固有名詞や数字をならべたてる。
USCPA試験などで、問題文がわれわれにとって冗長に感じられるのも、このせいだ。
ためしに外国人に「サンキュー」「ソーリー」とだけいえば、かなりの高確率で
「For what?」
と聞き返される。
こちらは、ほわわわわっと感謝とか申し訳ないとかの感覚を伝えたいだけなのに、相手は「解像度を上げてくれ!」と要求してくる。日本語ではそんな(無礼な)具体化要求はしない。
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ということで、ビジネス(BEC)のエッセイ対策の話をしよう。英語で書くということの基本は、
・まず結論を書く
・理由を述べる
・可能なら具体例を挙げて理由を補強する
・冒頭に挙げた結論を繰り返す
この順番である。
日本語
「A社との監査契約ですが、想定では今月の終わりに契約できるはずでしたが、先方の幹部が今月たいへんお忙しいということもあり、決して揉めているわけではありませんが時間の関係から、契約クローズは来月になりそうです」
↓
英語的な順番
「A社との契約クローズは今月ではなく来月になります。揉めてはいません。幹部の時間がないという理由だけです」
↓
それを英語にする。
というプロセスで答案をかく。最初の日本語の順番のままで英訳すると、大変読みにくい英文になるから気をつけること。とにかく「結論から書く」という癖をつけよう。
ただし、もちろん日本語ムラで、英語「みたいに」話すようなことをしてはいけません。文字通り「よそよそしい」ムラのよそもの扱いされてしまうからだ。郷に入っては郷に従え、ということです。
TAC USCPA講座/草野 龍太郎 講師