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#453 演繹と帰納
外国の方々とやり取りをする機会が多い読者のみなさん。
コツがあります。それは、
「大きい話(general)」を最初に言って、「細かい話(specific)」は後から話すということです。
『最初はざっくり→細かいことはあとで』と覚えましょう。
逆に、日本人同士であれば反対に
『最初から細かいところまで伝えて、後から全体像を補強していく』
というやり方のほうが、打率が高いです。日本人は、あるパーツの細かいところを疎かにしたままでは、次のパーツの話に集中できない方が多いからね。
いつも申し上げているように、日本人が優れているとかダメだとかいう話ではありません。
「郷に入りては郷に従え」というだけのことです。もしくは「人を見て法を説け」。
ポイントは、世界では、日本人と異なる思考法の方々がマジョリティであるかもしれないと想像しましょうということ。
『あなたはどういう仕事をしているの?』と聞かれた場合、日本人的な発想では
『◯◯企業に勤めていて、システムをチェックしてます。そのシステムとは何かというと〜』と細かいことから積み重ねていきます。
相手には仕事の全体像が見えませんが、細かいパーツが組み上がっていくと、時間はかかりますが、最後にパッと正確な図が現れる。
「ああ、管理会計をやっておられるんですね、そのためのシステム運用が担当なのね」と。
これが、日本式の「帰納法」です。英語ではinduction。
その反対が「演繹法 deduction」ですね。
「仕事?管理会計やってます。主にレポーティングのためのシステムとデータベースのメンテナンスが中心ですね。。。」
と、細かい情報を後から伝えていきます。形容詞は後からです。
日本以外の国の人たちとやり取りをしていく上で、
「相手は演繹法に慣れており、帰納法で話されると『わかりにくいな』『回りくどいな』と不快に思うのではないか」
と想像してみることはとても重要です。
この「演繹か帰納か」の話は、勉強法にも大きく影響するようですね。
例えば、、、草龍はいつも、とにかく問題集を7回回しましょうとお勧めしております。
それが上手く行く方は、概ね「不完全でもかまわないから、まずは1周やってみる」という趣旨に賛同して下さり、実践いただいています。粗くてもいいから2周、3周、、と回してみるんだと。
しかしそうではなく、1周目からわずかの欠損もゆるさず、1ミリも揺るがせにせずに取り組む方もおられます。日本人思考にもとづき、細部を正確に積み上げていき、全体像は最後にできればよいという発想ですね。
どちらでも向いている方でおやりになればよいです。演繹が向いていない帰納型の方は、「わからないところはわからないままでいいから進む」というのが生理的に汚らわしくて受け入れられないという方も少なくありません。
一方で、演繹型の方は、例えば多少意味がわからない英単語があっても、ちょこっと印をつけとくくらいにしてどんどん読み飛ばします。
読み飛ばして文意がわかるならそれでいいじゃない、一気に進めるというリズムが大事で、辞書をひくことで中断されるのがイヤだ、という感覚ですね。
無理は禁物です。帰納型の方は、細部の積み上げで戦ってください。感覚に合わない勉強をいくらしても成果は出ません。
自分自身の「型」を大切にすること。他人の「かっこいいフォーム」をマネしようとして「型」を崩すのが、試験勉強にかぎらず、人生の一番の失敗要因です。
言い換えますと、人生の修行とは、自分の「型」をリスペクトできるようになること。
つまり自分の「型」による成功体験を獲得することで、ああ、この型もアリなんだ、と自分自身がハラオチするようになることが、一生トレーニングを続けることの究極の目的なのです。
そして、自分の「型」をリスペクトできるようになる最大の効用は、「人には人それぞれの『型』があるべきなんだ」と心から認められるようになること。
他人の型を想像して、自分とは違う型を大事にしている方々に、どうコミュニケーションしようかな?と考えることができるようになること、これが大きいのです。
日本式の思考を英語に直訳できることは、「英語ができる」とは言えません。
読者のみなさんは、国際資格試験トレーニングを通じ、自分とまったく違う型を大事にする方々とのビジネスコミュニケーションができるようになることを目指していただきたい。
(私見ですが、その意識をもっている人は日本国内にどんどん少なくなっているので、超ブルーオーシャンだと思います!)
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師