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#444/成長し続けるための8原則( 5 )
「資格試験勉強はトレーニングである。そのトレーニングを継続・成功させるための条件はなにか?
(何をすべきで、何をすべきでないか?)
前回までの振り返りです。
??原則1<<総合>>
「トレーニングでは下記3つの能力を、総合的にバランスよく鍛えること」
@「合格に必要最小限」よりちょっとだけ幅広で難しい論点のインプットと、そのアウトプット(時間がかかってもよい)
A「合格に必要最小限」論点だけの、高速アウトプット
B長時間にわたってAを処理し続ける持久力
??原則2<<意識>>
「トレーニングではいま自分は何のトレーニングをしているのか、に対して意識を集中する」
そうすれば、鍛えるべきパーツたちを覚醒させ、鍛えることができる。
??原則3<<特異性>>
「鍛えている能力だけが伸びる。鍛えていない能力は伸びない」
自分は何をトレーニングできて「いない」のかについて、謙虚かつ客観的に認識し続けること。
??原則4 <<可逆性>>
「いちど鍛えた能力でも、トレーニングを中止すれば、その能力は維持されることなく衰えていく」
休むとそれまでのトレーニングがムダになる。だからこそ、大切なのは「イヤにならない/故障しない程度の強度」を、決して超えないこと。
例えば.....トレーニングをはじめて2ヶ月くらい経つと、気持ちがノッてくることがあります。なんだか「猛烈に頑張りたくなる」。
そういう時に「調子に乗って」やり込みすぎてしまうと、そのあと数日、集中力がガタ落ちすることがあります。
脳やカラダは、あまりにも興奮すると、自分が思ったよりも疲弊してしまう。そしてそこからの回復は意外なほど時間がかかる。
一日だけ激しく燃えることができる人は、たくさんいます。しかし、長くしみじみと炎を絶やさないことができる方は少ない。
価値ある資格のためのトレーニングは、長期戦です。マラソンです。42キロの完走をめざしているときに、100メートルだけ猛ダッシュする人はいませんよね?
東京五輪の男子マラソンで優勝したキプチョゲさんは、限界を超えたトレーニングをすることは決してない。
それどころか、自らの限界(心拍数などで科学的に測定)の80%を超えるトレーニングをすることも滅多にないそうです。
キプチョゲさんが100%を出すのは、試合の時だけ。このポリシーをつらぬき、マラソンの公認世界記録を更新し、まもなく37才になるというのに世界一に君臨し続けています。
毎日のトレーニングを「これ以上できないくらい頑張った」となるまで追い込んではいけません。「もうちょっとできるかな」というところでやめて、明日継続する余力とモチベーションを残すこと。
それが、長期にわたるトレーニング<<継続>>のコツです。
かつては、「本番でラクに感じられるように、本番より強い負荷をかけるのが、トレーニングである」という考え方が主流でした。
それによる怪我、メンタル燃え尽き、脱落は「やむを得ないコスト」という発想です。
いまでもそういう思想の「コーチ」「経営者」「管理職」はあちこちに残っておられますね。残念なことです。
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誤解しないでいただきたいのは、いかに<<継続>>が大事だからといって、軽いトレーニングだけでいいというわけではありません。
「もうちょっとできるかな」というところでやめておく。ということは、そこまでは負荷をかけるということです。でないと、そもそもトレーニングになりません。
「まだまだぜんぜんできるな」で毎日やめてしまっていたら、決して成長できません。
??原則5<<負荷>>
「トレーニングでは、適正な負荷をかけなければ、能力は強化されない」
キプチョゲさん流にいえば、「自分の限界の80%までは、毎日のトレーニングで追い込む」ということです。
もちろん「80%」は人によって大きく異なります。本来は、受講生さんお一人お一人にトレーニングメニューを作って差し上げたいところです。
あくまで目安となりますが、これを時間と頻度でお示ししたのが、当コラムの第441回・442回です。もう一度お読みになっていただければと思います。
2点、付言いたします。
1、惰性の防止。
適正な<<負荷>>をかけていれば、人間は成長します。成長すると、それまで<<負荷>>だった質や量、そしてスピードが、苦痛でなくなってきます。
喜ばしいことに「成長している」わけですが、そこにワナもあります。そう、せっかく成長したというのに同じ<<負荷>>に甘んじているようだと、もはやトレーニング効果がなくなるということです。
いわゆる「惰性」ですね。これはいけません。トレーニングの負荷が「80%」前後を維持できるように、ご自分の成長に合わせて量・質・スピードを少しずつ上げていくようになさってください。
2、伸び悩みに耐える
トレーニングを続けてさえいれば必ず成長し続ける...というわけでもありません。かならずときどき「成長のカベ」に当たります。そしてその期間に、イヤになってやめてしまうリスクが高まります。
せっかく原則4<<可逆性>>を意識して、「80%」を超えないように無理せずやってきたというのに、それでも燃え尽きるとは.....という思いに囚われます。
早とちりしないでください!これは「燃え尽き」ではありません。大きく成長するために「貯めている」ところです。
飛ぶ前にしゃがむといいますか、噴火前にマグマが溜まるといいますか、ちょっと高めの段を登るために時間がかかっているだけです。
伸び悩みの期間にこそ、淡々とトレーニングメニューをこなし続けることです。数日から10日間ていどで停滞期を抜けることができます!
その時には、明らかな自らの成長を実感することができ(かなり最高の気分です)、では負荷を少し強くしてみるか!というモチベーションが湧いてくるのです。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師