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#435 <<失敗>>はインプット
もと受講生の方からご相談をいただきました。皆さんにも参考になると思いますので、相談者さんの了解を得て、改変して以下に転載します。
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草龍先生、合格後もずっとコラム読んでます。いきなり弱音で申し訳ありませんが、わたし、今の職場で<<成功し続ける>>のが無理になってきました。
わたし、一応チームリーダーなんですが、もう降ろしてもらうか、何なら転職しようかと悩んでいます。
先生もわたしのチームのメンバーと会っていただけたらわかります。とにかく、無理なんです。
わたしの勤め先は、いわゆる<<一流大企業>>なので、チームメンバーはIQ的に賢い人が多い。でも、先生がいつも仰る「合理的判断」が驚くほどできないのです。
何かやってもらうと、必ず的外れなことをします。
そこまではまだいいんですが、問題はそこから。
メンバーは、なまじ賢いだけあって、「なぜ非合理的なことをしたか」についての正当化をダーっと並べて、言い訳するんですよ。
気付いたんですが、それ、要するにわたしに言ってるんじゃないんですよね。どうやら自分自身に言い聞かせるために、わたしを活用してるだけらしいんです。
「しまった、やっちゃった、謝らなきゃ」という自分自身を押さえ込んでで、「自分は悪くないんだよ。というのはね.....」と納得させようとしてる。
そのために「賢さ」をフル稼働しているという感じです。
貴重なエネルギーをもっと建設的なことに使ってくれればと思うんですが、ポテンシャルのエネルギーの半分くらいを、自分を正当化して自分のメンタルを守るために使っている。そんな気がします。
と言うわけで、このチームではとても<<成功し続ける>>なんて、とても無理なんです。。。
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ご相談、ありがとうございます。
自分の心を守るための「賢さ」と、物事を客観・俯瞰する「合理性」が相関しないのは、そもそも当然です。
両方ともできるという方々ももちろんおられますが、どちらかしかできない方が圧倒的に多数でしょう<<データなくてふわっとしていてスミマセン>>。
自分の身(メンタル)を守る「賢さ」と違って、「合理的思考」は後天的なものです。それなりの「技術」が必要です。
・様々な方向性から
・主観バイアスを除きつつ
・しかしゆたかな想像力を働かせて
・俯瞰して考える
というような「技術」です。
もちろん「技術」ですから訓練次第で伸ばすことができます。ただしそのためには、上達のための訓練を受ける謙虚さがないといけません。
<<馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない>>。
もう一つ。チームリーダーとしても「間違ってもいいです、失敗してもいいです」と言い続けてあげないといけませんね。
流行りの言葉では<<心理的安全>>というんでしょうか。ただ単に「いいよいいよ」と甘やかすのではありませんよ。
<<失敗>>は「インプット」であるということをチームの共通認識にすること、これが本質なんですね。
<<失敗>>を「成功しなかったアウトプット」だと考えている間は、何をやってもうまくいきません。
いつまで経ってもメンバーさんたちは「自分は<<失敗>>していない!」と自分を騙そうとすることに全力を注ぐからです。
これが「チームが良くなる仕組み」です。それを理解しているリーダーたちは、たくさんのコストと手間をかけて、「賢い」だけのメンバーさんたちに
「<<失敗>>はインプット」という意識付けをするように励んでいるのです。
皆さんそういう意識はないのかもしれませんけど、上手くいっているリーダーがやっていることは、煎じ詰めればそういうことです。
まずはあなた自身から<<失敗>>はインプット、と心から信じて実践してみてください。あれだけの早期合格ができたあなたなら、そのマインドチェンジもできるはずです。
あなたがリーダーを降りても、他にあなたに代わってこのマインドチェンジをリードできる方がおられるというなら、代わってもらうのもいいでしょうが、
あなたが気分一新してやってみるという手もあるのではないでしょうか。転職先の所属チームが、「<<失敗>>はインプット」というマインドの集団である可能性は、わかりませんよ。
TAC USCPA講座 草野龍太郎講師