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#427 ダメ出しされることの大切さ
受験の本番。プロメトリック会場であなたが行うことは、ずばり「アウトプット」ですよね。
アウトプットに関しては、いまやネットでも本屋さんでも驚くほど多く提供されています。
アウトプットに当たって「やるべきこと」「それができるようになる方法」がたくさん書いてある。
『伝え方が9割』『読みたいことを、書けばいい』『1分で話せ』.....名著、目白押しです。
USCPA試験においては、アウトプットの「べし」と「その方法」は明確です。それらはいつも我々講師一同が、受講生のみなさんにお伝えしている通りですが、何と言っても肝心なのは、
この試験においては「アウトプットに工夫を凝らす」という必要は全くない。というか、工夫を凝らしてはいけない。ということです。
「基本に忠実に」
ただ、それだけです。
ここをめちゃくちゃ強調するのはなぜかというと、受講生のみなさんの多くがビジネスパーソンだから。
試験本番以外の日常のビジネスシーンで、みなさん「アウトプット」に全身全霊をかけて「工夫」をなさっているからなんです。
アウトプットする力、あるいはプレゼンする力、この高さは即ちその人の実力の高さの現れであると信じられている世の中ですからね。アウトプットに工夫しないなんて、そんな怠慢は考えられない。
ただでさえ「実力がないのにアウトプットだけrich」という例が枚挙にいとまがないほどです。実力があるホンモノのみなさんであっても、アウトプットに全力を尽くさない限り、認めてもらいにくくなってきた。
「わたしはホンモノなのだから、黙っていても誰かが見出してくれる」
というようなスタンスでは、ちょっと厳しいかもしれません。その理由は前々回(425回)「検索されるホンモノ」に書きました。
「アウトプット」は、他者に認知され、他者に評価されて、それで初めて「アウトプット」となります。あなたが好きなことをあなたが好きなように発しているだけでは「アウトプット」にはなりませんよね。
他者の評価というのは、上司の方のレビューとか、次工程の方のチェックとか、お客様からのダメだしとか。一匹狼として単独で仕事をしている方でも、アウトプットだけは自分一人で完結することは決してありません。
「できたぜ.....」
と自己満足感に浸っていても、それを他者さんから検収しますなり、交換してくださいなりと言われるまでは、アウトプットは終わっていません。
こういう話をしますと、決まって
「アート(アーティスト)には他者評価ごとき無用」
という方がおられます。ですが、これもちょっと「昔気質(むかしかたぎ)」かも知れないです。
いま世界のアートマーケットは7兆円規模とも言われていますし、例えば3月19日から21日まで開催された「アートフェア東京」でも、
アートの売上は数十億円だったそうです。これからのビジネスアカウンティングに、アートマーケットへの理解は欠かせませんよ。この話はまた後日。
ということで「アウトプット」に欠かせない「他者評価」。当たり前ですが「承認される」より「ダメ出しする」ほうが精神的ハードルが高い。というか、不愉快です。
だからこそ、積極的に自分のアウトプットをさらして批判を浴びるという不愉快に耐えられるほど、人は成長するのです。
自分のアウトプットに対するネガティブな他者評価を避けて逃げて隠して.....という方は、それがヒトとして当然の自己防衛行動であるが故に、要するに「フツーのパフォーマー」になってしまいがちなのです。
高アウトプット力がある方は「自分のアウトプットをつけるためには、ネガティブなフィードバックを受け入れるしかない」とハラをくくっている。
そして「自分のアウトプットは、どこかどうダメだと思われたのか」について、謙虚に知ろうとする。
「どこがダメなのか」ではないですよ。「どこがダメだと思われているのか」を大事にするのです。評価が悪いことを、カンタンに相手のせいや運のせいに転嫁せず、
フィードバックを素直に受け入れて「なぜそう評価されたのか」をどうにか知ろうとします。
ただ近年は、他人にダメ出しをすることによるリスクがあまりに大きくなりすぎました。大切な仲間だと思うからこそ辛口のレビューをするという厚意が、
「ハラスメント」「親には褒められたことしかないのに」「傷つきました」の一言で吹き飛びます。
社内に何人か「あの人に厳しく育てていただいたおかげで一人前になったようなものです」という人がいましたが、今はどうでしょう。「職を懸けて部下を教育する」という方は、減っているかもしれませんね。
ということで、「叱ってもらえない」という現状のビジネスシーンで、「アウトプットを工夫する」のはしんどくなりつつあるように思います。
ネガティブなフィードバックが当たり前という環境という意味では、資格試験などの受験勉強の時間は、実はとっても貴重なのかも知れません。
TAC USCPA講座 草野龍太郎講師