資格の学校TAC > TACメールマガジン > 米国公認会計士バックナンバー
#426 リスク(3)
難関の職業資格に受かったとき、
「ああ、これでもう勉強しなくてすむ」
と思われた方は、その厳しい職業には向いていないかもしれません。
そうではなくて、
「ああ、これでやっと、資格に受かるためのトレーニングではなく、本当の勉強ができる」
と感じる方は、向いている可能性があるように思います。
さて.....リスク(とリターン)の第3回です。
大企業のシステム障害が続いています。そこでみなさんの中にも、経営者さんや上長さんから、
「当社は大丈夫なんだろうね!?」
「絶対に事故をおこすんじゃないよ!!」
などと言われている方も、結構いらっしゃるかもしれないですね。
そういう方々のもとで、貴重な時間を割いて働いていることの是非については、みなさんよーく考えられた方がいいように思います。
事故の可能性を下げる努力をすべきなのは当然です。が、そこには限界があります。どんなに「事故るとヤバい」システムであっても、事故はゼロにはなりません。
したがって、リーダーが指示すべきは2つ。
「事故を減らせ」
「事故に備えろ」
です。
つまり、みなさんのような方々が上長さんから聞くべきセリフは、
「事故を前提にした事前の計画を説明しなさい」なのです。
決して「キミい、当社は大丈夫なんだろうねえええ」「私はお詫び会見とかゴメンだよおおお」ではない。本当はそうなんです。
ですが、日本を支配している土着信仰の教義に従うと、
「起きてはならないことは、起きないことにする」
「起きてはならないことに備えるのは、縁起が悪い」
となります。こう言えないとマジョリティのみなさんから「不謹慎だ」と忌避され引きずり下ろされてしまう。
いい悪いではなく文化だから、大きな組織を動かすには従うしかない。
ただ、裏では信仰の呪縛からフリーなメンバーをしっかり組織しておくことです。それは、
「事故や障害はいつか必ず起きる。それを前提に対策を考え、有事に必ず実行できるようにする」
という考え方を受け入れられるチームです。大きな組織ではこういう方々はマイノリティだから、リーダーが(裏で)しっかり身分保証しないといけません。
声が大きな営業部隊などから「万一事故が起きた時の対策だと!?ふざけるな!!事故を起こさないようにしろよ!!!」と怒鳴られたりするからです。
実際、土着のゼロリスク信仰の強さは驚くほどです。基幹システム刷新プロジェクトを率いておられる読者もいらっしゃると思いますが、
日々頭を抱えているのではないでしょうか?
ゼロリスクのために、あり得ないシナリオにも対応することが求められ、コストは膨らみ、スケジュールは押していきます。
「こんな取引がもしあったらどう対応するんだ!メニューがないじゃないか」と言われたら「リスクアセスメントは、発生確率と発生時被害の掛け算ですよ.....」などと
教科書通りに答えようものなら、「リスクをアセスメントだと!?見逃していいリスクなんてない!」となりかねません。
マジョリティのみなさんの土着信仰を決して馬鹿にせずリスペクトしながら、しかし裏では「リスクマネジメント」をしっかり用意する。
このダブルスタンバイの技量こそ、みなさんが「試験合格後に本当に勉強すべきこと」のひとつです。
そのダブルスタンバイを支持してみなさんを守ってくださる経営者・上長さんを探すのが、合格後のファーストステップかもしれませんね。
TAC USCPA講座 草野龍太郎講師