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#421 会社を雇う
管理会計の「カ」の字もわかりません、という経営者の方は少なくありません。
みなさんにもそういうお客様や上長さんがおられて、ご説明に時間を取られることがありませんか?
草龍はお客様に動画をお渡しするようにしています。本当に勉強したいお客様ならご覧になり、続きを見せて!とおっしゃいます。
例えばこのようなものです。
★YouTube / 草野龍太郎くさりゅー管理会計講座1 予実差異分析イロハのイ
https://youtu.be/plAxnQW4rT8
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さて、草龍も自分自身、10年間小さな会社を経営し、いろんな方々を雇わせていただいてきました。
限られた経験ですが、こう感じています。
自分のやるべきことをやっている方々はご自分の権利をあまり主張せず、義務を果たしてない人ほど権利を主張なさるということ。
これは、権利主張が悪いと言っているのではありません。
「自分がやる」か、「自分ではなく他人にやってもらう」か。<<雇われる方々>>の考え方は、大きく二極化していると思うのです。
つまり、「自分がやる」方々は、他人にはへんな期待をしない。他人が自分の思い通りに動くなんてありうるはずがないと知っている。
自分が懸命に動いて、他人さんにも少し動いていただけたらラッキー、感謝感謝と考える。
われわれ経営者には多かれ少なかれこういう人が多いし、読者のみなさんもそうじゃないですか?
一方、「他人にやってもらう」思考の方々は、他人や環境を思い通りに動かそうとして余念がない。
<<キープ客観・ステイ上機嫌>>の逆で、主観と不機嫌でまわりを操ろうとする。
しかしやっぱり他人は思い通りには動かないので、結果、いつも怒って他責している。
こういう他責思考の方は、やはり<<雇う側>>より<<雇われる側>>に多いんじゃないかな。
とはいえ別に、全員が会社を経営すべきだとか、無理やりにでも個人事業主になるべきだとか、そんなことは言いません。
法的には会社に<<雇われる>>状態でも、「自分がやる!」気持ちを維持できればいいわけです。
そのためには、<<会社を雇っている>>つもりになればいいんじゃないでしょうか。
ご自分が事業主であり、会社をサービスベンダーとして使っている、と思い込むことです。
たとえば、ご自分のお給料が600万円の方。仮にご自分が外部の顧客に対して出しているバリューが1,800万円だとしましょう。
しかしあなたにはオフィスがない、経理・IT・法務・労務...なども必要だ。さらには自分の仕事を分担してくれる部下さんたちにもいてほしい。
そこで、毎月100万円を会社に払って、それらのサービスをまるっとアウトソースしている、と考えるのです。
問題は、あなたが会社に対して600万円のバリューを付加できているかどうか、ではない。
会社があなたに100 x 12ヶ月=1,200万円のバリューを出してくれているか?です。
もしそうでないなら、リアルにご自分で事業を立ち上げた方がいいわけですよね。
これは「他責」の方々の発想とは根本的に違います。
なぜなら、出発点が「自分が<<事業主>>として外部顧客に対して付加している価値が、1,800万円ある」と
見極めるところからスタートしているからです。
他責の人は「わたしはこんなに頑張っているのに600万円しかもらえない」と怒りをふつふつさせます。
しかしそこから動こうとはしません。
その点、自分が事業主の人は、周りに怒るにしても「こんな低レベルのサービスで月額100万円取るのか」という点に不満を持つ。
それならアウトソース先を変えようと考える。
つまり転職ということですが、転職先を選ぶにも「自分はどういう条件で雇われるか」ではなく「この会社はどういう条件で自分に雇われてくれるか」を見極めようとする。
このように、法的に被雇用者であっても自分の人生の事業主であることは、可能です。
「終身雇用&年功序列」の日本式経営は、1940年ころ米英と戦争する準備のために始まったと言われています。
その後、戦後の高度成長時代に、そこに世界最強の解雇規制が加わり、現在の「ザ・正社員制度」が確立しました。
よい効果もあったでしょうが、「他責思考」の被雇用者さんたちを大量に生み出し、停滞の一因にもなっている。草龍はそう考えます。
「他責思考」さんたちがたくさん雇われている組織は、この先は、かなり厳しいと思いますね。
もしも読者のみなさんがそういう組織に身を置いておられるなら、早めの脱出を考えたほうがいいかもしれません。
え?「たしかにダメ企業だが、私がいなくなったらこの会社が回らなくなる、だから辞められない」ですって!?
それって立派な自己犠牲のように見えて、けっきょく他責思考の一種なんですよ。だって<<雇われている>>からそういう発想になるんでしょ?
自分で動く人は、法的には会社に勤めているけど、実質的には<<会社を雇っている>>。
だから「このアウトソース先、何を言っても改善しない。ダメだな。早く変えたいが、さすがにいますぐ急に契約打ち切るのは気の毒だ」と考えるわけです。
ただし繰り返しますが、そういう考え方が許される大前提は、自分の市場価値がいまのお給料よりずっと上回っていること。
逆に、お給料のほうがご自分の市場価値を上回っている方は、「他責」に徹する戦略のほうが合理的ですものね。
TAC USCPA講座/草野龍太郎 講師