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2020/08/27
成功し続ける方法/399回 <「議論」は、しないこと>
酷暑が続く。みなさん、くれぐれも身体に気をつけましょう。

特に、冷房にかけるお金を惜しまないようにしよう。この時期のエアコンは冷蔵庫と同じと割り切るべきである。実際、エアコンにもっとも電気代がかかるのは、高温時に起動したときだとわかっている。付けたり消したりするのなら、冷蔵庫同様に、付けっぱなしにして部屋を高温にしないようにするのがよい。

しかし、この話は50代以上の方々には通じにくい。この世代は、冷蔵庫を付けっぱなしにすることにはまったく疑問がない。けれども、エアコンを付けっぱなしにすることには罪悪感を抱く。月額数千円の電気代増加を恐れる。

同様の理由でこの世代は、衣類乾燥機や食器洗浄機も嫌う。コストをかけて「快適」「ラク」「時間的余裕」を買うことを「もったいない」と嫌がる。というより、そういうことは「バチがあたる」と畏れて(おそれて)いる。

その世代がオフィスを仕切っていると、経理業務などの現代化も、まるで進まない。

経理業務は、自動化・機械化もしくは外部化(アウトソーシング)が非常にやりやすい。RPA(事務ロボット)の導入も盛んに進んでいる。しかし、「エアコン付けっぱなしなんてとんでもない、バチがあたる」という世代からしてみると、経理業務の現代化もまた、忌み嫌う(いみきらう)べき穢らわしい(けがらわしい)もののようだ。

お金でヒトの時間を買うことは「もったいない」「バチがあたる」と生理的にイヤがる。その逆に、ヒトが時間をかけてわずかばかりのお金をセーブする姿をみると「勤勉だ」「感心だ」と喜ぶ。

エアコン付けっぱなしや、経理業務自動化のように、「そういうことをするとバチがあたる」と思われるようなことに関しては、議論というものはまず成り立たない。

ただでさえ、この国では議論という習慣がほとんどない。自分の意見に反対されると、自分の人格そのものを否定されたと感じる方々がとても多い。

ましてや、「もったいない」「バチがあたる」「穢らわしい」という畏れを否定されようものなら、全身全霊で拒否する。理屈やデータを持ち出されたらなおさらだ。

「空調の電気代より、熱中症による損害のコストのほうが高い」ということは、大人なら6割くらいの方は「脳による理解」ができる。しかし「ハラオチ」する人は少ない。

「このコップにはオシッコをしました。しかしその後、徹底的に洗浄し消毒し、科学的に『汚れ』はゼロです」と言われたらどうだろう?そのコップで水を飲むのはイヤだ。脳で理屈はわかっても、ハラが「穢らわしい」と拒否する。

そもそも脳は、ハラ(腸)の付属品にすぎない。ハラは巨大な「免疫の総本山」であり、カラダ防衛のヘッドクオーターだ。

腸には脳と同じくらいの神経細胞が備わっている。というより、脳のほうが、腸が生き残るために腸と同等までに発達した「出先機関」なのだ。

脳がない原始動物はいるが、腸がない動物はいない。腸が「今日」を生き延び、「明日」子孫代々に遺伝子を遺すことが「生きる」ことである。そのために脳は(そして目鼻耳や、手足や、生殖器なども)ある。

つまり、先祖代々長年にわたってカラダに染み付いた「畏れ」というのは、

「出先機関の脳ごときが『考えた』ようなことで、大事なカラダがリスクをおかすようなことは、腸が決してゆるしません」

ということなのだ。

腸でもって効率化や合理化に反対する人に、脳でメリットを理解させようとしても、その人の脳を板ばさみにして苦しめるだけである。これは「成功し続ける方法」とは、とても言えない。

「成功し続ける」には、仲間や上司やクライアントを(そして家族を)、腸によってハラオチさせることが必要だ。脳による説得は、ハラオチを正当化するためのアトヅケのツールである。

この序列は、決して揺るがない。この半年間で、それを改めて確認した。「ハラオチ」していないひとと「議論」をしてはならない。



(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)
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