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「好きなこと」が共通する人どうしは、結びつきやすい。しかしその結びつきは、意外にも破綻しやすい。
みなさんも身近に1つや2つ、そういった壊れた人間関係の実例をご存知ではないだろうか。
その理由を考えてみると、いくら「好きなこと」が一致していようが、「イヤなこと」まで一致しているとは限らないから、ではないだろうか。
「好き」が一致していればいるほど、「イヤ」の不一致に寛容でなくなる。「好きの一致」ゆえに、「イヤの不一致」が理解できない、理解したくない。
そしていつしか、互いを許せなくなってしまい、あれほどまでに良好だった人間関係が、ボキッと壊れてしまう。
これと逆に、「イヤだと思うこと」が一致していると、人間関係は長持ちする。
メンバーの「イヤなこと」が、ズバリ一致していなくてもよい。ただお互いの「イヤの不一致」に寛容でありさえすれば、その人間関係は長持ちしやすい。
この春の《ステイホーム》が家庭内であぶり出したのも、このことだったんじゃないだろうか?
さて、家庭はともかく、、、職場のチームの話をしよう。
チームが大きな成果を出すとき、じつはその背景には「寛容度」が大きく影響している。メンバーの間で「イヤなこと」が不一致であることを認める「寛容度」は、チームの業績にとって重要なのだ。
チームビルディングのやり方を教えるコンサルタントさんやビジネス書は数多い。そのほとんどは、「メンバー間で『好き』の一致を図りましょう」と説いている。
「好き」の一致をプロモートするために、《ビジョン・ミッション・バリュー》を作る(作り直す)企業もある。それはとても大事なことだ。
しかし忘れてはならない。現実に、仕事の現場で戦うチームにおいては、「好きの一致」よりも先に「イヤの不一致への寛容」があるべきなのだ。
本来、チームメンバーそれぞれに「イヤなこと」は異なるはずだ。その「不一致」を、認めない/許さないというチームは、けっして少なくない。むしろ、ほとんどのチームがそうなのではないだろうか。
もちろん、チーム側には理由がある。
・メンバーみんなのわがままを聞いていたら、キリがない。
・ひとりふたりだけの「イヤ」を解消してしまったら、ほかのすべてのメンバーの不満も聞かないわけにはいかない。
・そもそも、チームというのは、それぞれの「イヤ」を押し殺すべきなんじゃないのか?「ワン・フォア・オール」の精神こそが、チームワークってものなんじゃないのか??
.....そう、この発想こそ、冒頭に示した「好きが一致した人間関係」そのものなのだ。チームは好きが一致していなければならない、好きが一致している以上はイヤも一致しているべきだ。
こういう関係は、結びつくのは速い。しかし、バラバラになるのも、また速い。
メンバーにとっていちばん大切なことは、それぞれの「イヤ」を解決してもらうことではない。それよりもまず、チームが認めることだ。「メンバーそれぞれに異なる『イヤ』があって当然なのだ」と。
そしてチームが、そのポリシーをメンバーに周知すること。これが、メンバーにとって大きなセーフティネットになる。
「うちのチームでは、自分なりの『イヤ』があってもよい」。そう認められるという「安心」があれば、メンバーは自発的にチームへの帰属感を高めようとする。
そうなったところで初めてメンバーは、「好き」を一致させよう!というチームの呼びかけに応じるようになる。
メンバーにとって、チームの目標をハラオチさせることも容易になる。メンバーのモチベーションが上がり、参加意識も獲得しやすくなる。これらがチームの業績向上に大きく寄与しうることは、いうまでもないだろう。
繰り返し書くように、経済環境は大きく変わる。多くの方々にとって、それはかなり厳しい変化となる。それを乗り切るためにも、われわれはチームで戦わなければならない。
厳しいからこそ、「好き」が一致したチームで戦いたい。だからといって、手っ取り早く「好きが一致した人」をかき集めても、それだけではうまくいかないことを、キモに命じておこう。
急がば回れ。この夏は、「お互いの『イヤ』の不一致への寛容」を、あなた自身のなかで育てるところから始めよう。
それが、強いチームの第一歩となる.....職場でも、そしてもちろん、家庭でもね。
たいへんな時期ですが、よい夏休みをお過ごしください。
(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)