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先週の続き。また「ミス」の話。
試験本番中にいちばん避けたいことは、「ミス」そのものではない。これは先週読んでくれた人はアグリーだと思う。
ミスは、避けられない。だから、一番いけないのは「自分のおかしたミスに動揺すること」なんだ。
人は、自分を「恥ずかしい embarrassing 存在だ」と思うと、とてつもなく間違った判断をしてしまう。ミスが、より大きなミスを呼ぶのだ。
俗に「本番に強い」人に共通しているのは、これが分かっているってことだ。本番中にミスを恥じるという愚行に、決して脳のエネルギーを使わない。
仕事のプレゼンなんかでもそうだね。スライドをめくり損なっただけで「カーッとなって我を忘れてしまう」という人もいる。
その一方で、めくり損なった行為を自身で茶化して笑いを取ることができる人もいる。本番でのミスに「カーッと恥じ入る」ことがない。「得意泰然、失意平然」という言葉があるんだが、まさに目指す境地はそれだと思うね。
それって、どういう心の持ちようだと思いますか?
え?「鈍感力」だろうって?いい線いってるね!
本番のミスにうろたえない人たちの共通点は、「傲慢じゃない」ってことなんです。
小松美羽(Miwa Komatsu)さんというアーティスト、ご存知ですか。彼女とは無名のころ、9年前からの付き合いだが、今日のように大成功しても「泰然」。有名になって批判にさらされる度合いも増えているが、「無関心よりマシですから」と平然。
小松さんの周りの人たちも同様で、個性あふれる面白い人たちばかりだが、傲慢な人はいない。
投資家の藤野英人さんは、かつて著書で名言「貧乏とは、傲慢の結果である」を紹介してくれた。
なぜ傲慢だと貧乏になるか。
・傲慢は、「自分はミスをしない」という根拠レスな自信に満ちている。
・傲慢は、先人に教わろうとしない。
・傲慢は、失敗を反省分析しない。
「自分はミスをしない」と思いあがるから、本番でミスったときのシミュレーションを準備しておくということもない。この結果、本番でほぼ確実に「カーッと恥じ入る」状態になり、そしてしくじり、、、、貧乏になるのだ。
言い換えると、傲慢とニセモノは同値である。すなわち、傲慢はニセモノの証でおり、ニセモノは必ず傲慢だ。
そして、ホンモノは決して傲慢ではない。ホンモノは、謙虚 humble である。
もちろん、傲慢でさえなければ即ホンモノである、というほど、ホンモノへの道は甘くないけれどね。
「本番でのミスがなくならない、どうしたらミスがなくなりますか?」と質問してくるような、傲慢なあなた。そうです、「ミスはなくせる」と思っている時点で、あなたは傲慢なんです。
それじゃあいつまで経っても、大事なところでミスして「カーッと恥じ入る」という負のスパイラルから、決して抜けられないね。
ところか、不思議なもんで、傲慢てのは治るんだよね。ふつう性格ってあまり変わらないけど、傲慢は変えられる。
幼児のときからずっとスポイルされて、すっかり傲慢が身についてしまっているあなたでさえも、行いを変えれば割と短期間で「謙虚」に変われるんだ。
その第一歩が「ミスは無くせない」と覚悟すること。
で、第二歩が「そうと割り切って、では本番で自分がどんなミスをしそうか、シミュレーションしてみよう」と決意することだよ。
そういや、藤井新棋聖は、試合のあと(勝敗にかかわらず)対戦相手にふかぶかと頭を下げるそうですね。
あなたも傲慢から抜けるためには、まず、テキストや問題集にたいして敬意を表するところから始めてみたらいかが?
(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)