TACメールマガジン

 

資格の学校TACTACメールマガジン米国公認会計士バックナンバー

TACメールマガジン 米国公認会計士バックナンバー

米国公認会計士バックナンバー

2020/07/09
成功し続ける方法/393回 <「自分のアタマで考えなさい」という不親切>
部下(チームメンバー)と1on1すると、「情報共有が足りない」「指示があいまいだ」と言われてしまう、と悩むチームリーダーのあなた。

それはあなただけではない。そういうリーダーは急増している。とくに「企画部門」まわりで激増しているのだ。

逆にいうと、「企画部門」というエリート集団でも、「情報共有」「指示」の意味合いが大きく変わってきて、世の中いっぱんと変わらなくなってきているのだ。

この変化を理解していないと、あなたは「不親切」という評価をメンバーから突きつけられる。なんなら「パワハラ」のらく印を押されてしまう。

あなたたちの世代のエリートは、「言われなくても先回りする」ことで評価されていた。もっと言うと、あなたたちの多くは「あれこれ指示されるのが嫌い」である。結果はきちんと出すから(それも言われる前にやっとくから)、私のやり方にあれこれ指図しないでください、と思ってるでしょう。

自分のやり方でやると、成功もするが失敗もする。あなたたちはその失敗から学んで、なるほど知らなかった、次は気をつけよう、いやあ勉強になったわと考えると思う。

これ、べつに普通だよね?ところが、みなさんのメンバー世代からは「リーダーさんは超前向きだ」「前向きすぎて、ちょっと付いていけない」ってなるんですよ。

もちろん、直接あなたにはそういう言い方はせず、「情報共有が足りません」「指示が具体的じゃない」ってフィードバックしてくるわけです。

どうしてそうなるか?それは彼らにしてみると、「失敗するほどメンタルが痛めつけられることはない」からなのだ。

自分でやり方を考えて、試行錯誤するという時の「錯誤」が、たまらなく不愉快なのだ。英語でいうとembarrassing、もう恥ずかしくて悔しくていたたまれない...という感情。

だからあなたのメンバーさんたちは、あなたと違う。何より「自分でやり方を考えさせられて、そのあげくに失敗する」という最悪の事態だけは絶対に避けたい。

「あれこれ指示される」のも気に入らないのかもしれないが、「失敗」よりはマシである。だからメンバーさんたちは「詳細なマニュアル」を要求する。

ググると出てくるような、わかりやすい手順書である。場合分けもしっかりしてあって、こういうときにはこうする、そうでない時はこうする、と迷うことがないようなディレクション。

これを与えられない上司は「不親切なサイト」みたいなものだ。それに対して「不親切です」とクレームしたら「何でもオレに聞くな、自分の頭で考えろ」などと反論されたとしたら...

そんな経験したことない彼らは、呆然と立ち尽くし、メンタルが痛み、「パワハラされた」と訴え出ることになる。

メンバーさんには、ネット上のサービスと同じクオリティで「マニュアル」を提供しなければならない。

「ちょっと塩味を足してください」ではダメだ。「火を消す前に、塩を1グラム、利き手の親指と中指でつまみ、鍋の上10センチから、1.5秒かけて、均等になるように振りかける」などと詳細に言わなければならない。もし味が「失敗」してしまったら、彼らの一日はそれで台無しになるのだ。

また、メンバーさんたちの「情報共有が足りない」という不満も、文字通りとってはいけない。

あなたたちが若い頃に欲しかった「情報は、自分で考えて判断するための「材料」だった。その材料を自分なりに加工して「正解」を得られた時の快感が、仕事というものの醍醐味だった。

しかしいまは、そんな醍醐味なんかいらないから、とにかく失敗して恥をかかないようにしたい。ただでさえ少ない自己肯定感を、これ以上失いたくない。

であるから、メンバーさんが共有して欲しい「情報」は、「背景」とか「状況」の説明ではない。アメリカ本社が何と言っているかとか、香港の政情がどうであるとか、それはそれ。そういう「情報」をいくら「共有」されても困るだけだ。

彼らがほしい「情報」とは要するに「私が次に何をどうすればいいのか、その具体的な指示」である。繰り返しになるが、「これからきっと『もう少し塩味を効かせてほしい』と言われるんじゃないかな」などという示唆suggestion がほしいのではない。「塩を、どのタイミングで、どの分量、どうやって加えるのか、具体的に指示をくれ」、これがメンバーが言う「情報共有」の正体である。

と言うことで、メンバーさんの「指示不足」「情報共有不足」と言うフィードバックに悩むリーダーのみなさん。とにかく「背景情報をもとに、自分の頭で考えてください」と言うディレクションは、もはやディレクションとはみなされない。

「やってみて、失敗を積み重ねるとわかるよ」と言う「指導」は、もはや指導ではないのだ。

恥をかいたり落ち込んだりすることがないように、部下を「失敗」から守る。これが、求められているリーダー像なのである。

教室でも、「問題集を解くのが苦痛だ」と言う若い方が増えているのを実感する。誤答することが辛いのだという。そこで草龍は昔から一貫して、「問題集は、問題を解く前に解答を読みなさい」とご指導申し上げている。

むかし気質(かたぎ)の方は、そんなの邪道だとご不満のようである。勉強とは、初見の問題を自分の力で解く過程のことである、と。

しかし「自分の頭で考えることで失敗する可能性」を心から嫌う方々には、草龍の申し上げる勉強法もご理解いただいているようだ。

そもそも、解答を読んで何がかいてあるか完全にわからない状態であれば、その問題を解く資格はなく、単に時間の無駄なわけだから、「問題集はまず解答を読む」作戦は、理にもかなっていると考えている。


(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)
TACメールマガジントップへ
資格の学校TACのご案内