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Work from Home (WFH)が、長丁場になってきました。皆さんは、快適な環境でお仕事に自己啓発にと時間を有効に使えているでしょうか。
服のECではパッと羽織れるカーディガンがバカ売れで、電器屋さんではPC用のモニターが品切れになっています。家具屋さんでもオフィス用椅子が入荷待ちとのこと。
未経験の長期間「在宅」で、思いもよらないニーズ(不便、苦痛)を痛感している方も少なくないでしょう。特に、「家は寝るために帰るところ」と割り切ってきた方や、断捨離を強烈に推進してきた「ミニマリスト」の方は、苦戦しておられるかも知れませんね。
さらに、未経験の長期間「在宅」で思いもよらず再発見するのが、同居人の新たな一面ではないでしょうか。同居人というのは、家族だったり、恋人だったり、ルームシェアパートナーだったりするわけですが、ここまで長時間を継続的に一緒に過ごすことは、旅行以外にはないですからね。
在宅で時間ができたからと居間で資格試験勉強を始めたら、同居人さんから思わぬ攻撃をくらったりして。
「は?会計?それも英語??
そんなん、腹の足しになるわけ?なんないよね??
役に立たない道楽してるんだったら、オンデマンド出前のバイトでもやってきなさいよ。減った残業代のぶんを稼ごうとか、なんで考えないの??」
なんてDISられてびっくり。いや、もちろんフィクションですよ。でもいまいまの夫婦の会話では、あり得ないとは言えないな。
現代では、「恋人」の延長で「夫婦」になったご家庭が多いわけですが、本来この二つの人間関係は全く違うものです。
草龍は未婚の方から相談をいただくと、必ず次の2つの話をします。
1、
体調が悪くなったら、恋人さんとのデートをキャンセルして家に帰って寝ますよね?その恋人さんと結婚するということは、その人があなたにとって、体調が悪くて帰宅したときに家で会うひと(家にいるひと)になるということですよ。
そして逆に、あなたが家にいるときに、体調が悪いその人が帰ってくるということですよ。
恋人さんとあなたの関係において、そのイメージができますか?
2、
何かが「好き」という同士で結ばれた人間関係は、とても脆い(もろい)です。よくあるのは、その共通の「好き」を取り合う関係になってしまうとか、「好き」の度合いを競争しはじめるとか、そんなことで「内ゲバ(仲間同士での激しい暴力闘争)」になってしまうこともしばしばです。
本当に長持ちする人間関係は、「キライ」が共通していることなんです。例えば、チームでも国民でも、団結するためには「共通の強敵」がいるのがいちばんです。
別の例をあげると、衛生観念が一致していることです。「キタナイ」と感じる閾値(いきち)が共通していると、同居はすごくうまくいきます。
誤解してはいけないのは、共通すべきはどのくらいで「きれい」と感じるか、ではありません。どのくらいで「散らかっている」と感じるか、どのくらいで「不衛生」と感じるかが、恋人さんと同じくらいですか?
・・・この2点を確認した方がいいよ、とアドバイスします。テスト1の結果が「互いが体調悪いときにこそ一緒にいる、というイメージが湧かない」、テスト2が「一緒に旅行してみたけど、相手の水回りの使い方がどうしても気に入らない」ということであれば、結婚を焦らない方がいいよ、ということです。
人生相談コラムになってしまいそうですね。ところがこの2つのクライテリアは、ビジネス上のパートナー探しにも使えると確信しています。
テスト1の例で言えば、いっしょに働くということは、ほとんどの場合、苦労を共にするということです。みじめな失敗を共有するということです。地獄のような事態を一緒に乗り切るということです。
傷ついて、プライドをズタズタにされ、それこそ体調もボロボロになったときに、よろよろと帰りついたオフィスの「仲間」から、
「そんな調子が悪い草龍なんか見たくないなあ。いつもみたいにガンガンビシバシとこの場を仕切ってよ!できないの?がっかりだな」
なんてこきおろされたら、どうでしょう。慰めてくれとは言わないが、職場は安心して帰れる場所であってほしいですよね。でも、そういう「弱みを見せ合えるオフィス」って、実はとても少ないようです。
さらにはテスト2。景気がいいときは「好き」「やりたいこと」「目指すこと」が共通した人たちが集まりやすいですね。でもビジネスチームは、調子がいい時ばかりじゃない。「好き」なことだけで食っていくという訳にいかないこともしょっちゅうある。
そのときに、チームとして「どんなにお金がなくても、このビジネスには手を出さない」「この一線だけは、越えちゃダメだ」という「キライ」「キタナイ」の衛生観念が共通していると、本当の崩壊は防げるものです。
循環取引や違法商材取引にはじまり、決算の粉飾とか、データの改竄(かいざん)とか、不祥事の隠蔽(いんぺい)とか、、、何が「キタナイ」か、が一致していないチームで、商売の勢いがなくなると、コンプライアンスどころではなくなるから怖い。
長引くWFHで、よく知っていると思い込んできたご家庭そして職場の、意外な一面が見えて来る。それによって単に驚いて「うわー、そうだったのかー」とうろたえるだけではもったいない。
二度と見ることができない景色を見ているのかも知れないこの機会を、しっかり客観視しよう。そのためのフレームワークとして、2つの視点をご紹介しました。
あなたのHomeは、体調が悪いときに帰るところですか。
あなたのFamilyは、あなたの「キライ」「キタナイ」がわかる方々ですか。
(USCPA講座 草野龍太郎先生)