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2020/01/24
成功し続ける方法/372回 <「居場所」は目的でなく結果である>
「起業したい方」からのご相談がとても増えました。そう、ご想像のとおり、中高年の一流大企業にお勤めの方たちからです。

みなさん、当たり前ですがとても真剣です。ちょっと前によく見られた「大企業をひきずっている人」は、まずおられません。そういう方は私なんかに相談しないのかもしれないけど。

ちなみに「大企業をひきずっている人」というのは、例えばこんな感じ。

・あなたは何ができるのか?と聞かれると、「わたしは大企業の部長ができる(務まっていた)」と答える

・そうではなくて、ご自分で何ができるのか?と聞かれると、「わたしの強みは、自分で手を動かすことにあるのではなく、部下や業者に手を動かさせることにある」と答える

...こういう方々は、起業はもちろん、転職も難しいかもしれませんね。「昔ながらの中間管理職」というエクスパティーズへのニーズは、どんどん減っています。

さて、上記のような例とは異なり、近年は「ひきずっていない」方が起業決意を固めるケースが増えてきました。みなさん、ご自分自身でできる何かを身につけておられ、あるいは身につけるべく必死の努力を積み重ねておられます。

起業のご相談をいただくと、わたくしは必ずこう伺うことにしています。

「起業してリスクをとって、それであなたが得たいリターンとは何ですか?」「あなたは、いったい何を得たくて起業するのですか?」

それに対する答えに正解はない。実際、十人十色ですね。それでいい。別に「世界を変えたい!」「人類を救いたい」「地球をどうにかしたい」などと壮大に語っていただく必要もない。

ただ、ダメな答えってのがありまして、それは、相談いただいた以上、指摘して差し上げなければならない。その考え方で起業するのは、やめたほうがいいですよ、と。

起業に向いていないのは、《自分の利益(自利)ファースト》の考え方です。

《自利》というと「お金に執着する人」を想起するかもしれません。しかし昨今、ひとが執着するのはお金だけとは限りません。お金というより『居場所』を作りたいから」起業したい、という方が多いのです。

.....会社従業員というポジションに替わる新たなポジションを作りたい!いや、作らなければ!!それも、人生100年時代に耐える、長持ちするポジションを!!!

その願い、というか焦り、すごくよくわかります。

ですが、《自分の》居場所を作ることが起業の「目的」だというのは、これ、どえらく本末転倒なんですよね。

「居場所」というのは、起業して長年《利他》に取り組むことで得られる「結果のひとつ」なんですよ。決して「目的」にしてはならない。

これを履き違えていると、道を大きく誤ることになります。世間における「居場所」は、自分が勝手に宣言すればできるというものではない。そして、懸命に努力すれば必ず得られるというものですら、ないのです。

他のみなさんに貢献(利他)して、みなさんから存在を認めていただいて、そうしてみなさんがすでに占めているスペースを少しずつわけて譲っていただいて、それでようやく初めて「居場所」ができる。そんなもんです。

しかし、安定した会社勤めが長い方は、「『居場所』は、当然に与えられるべきもの」と自然に考えるようになってしまうことがあります。

これ、いかに「大企業を引きずっていない方」であっても、そう考えがちなんですね。「『お金』は天から降ってこない、自分の手に職をつけて、自分で稼ぐしかない」としっかり覚悟を決めている方でも、こと「居場所」については、えらく誤解していることがある。

努力さえすれば、「居場所」は得られる。だから、それを目指して起業して、努力する覚悟だ..... そう考えておられる方こそが、《自利ファースト》に陥っている。

自分の「居場所」の前に、自分がどう《利他》できるか?だけを純粋に考えつめられる方のほうが、起業には向いているように思います。

読者のみなさんは、専門性が高くていつでも組織から独立できる方も多いので、こんなことを書いてみました。



(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)
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