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咳が止まらない。ここはハノイ、《PM2.5のレッドゾーン》。
アウトソーシング先と折衝するために、ベトナムに来た。咳き込みながら最初にアタマに浮かんだ感想は、
「ここでもマラソンや競歩はできるんだろうか?」
...やってる。
今年10月20日に「第2回・ハノイ国際ヘリテージマラソン」が行われた。フルマラソンの部には3000人ほどが参加している。
スタートは朝4:30。がんばって走れば、まだ気温が30度ちょいの時間帯にゴールできるというわけだ。
常夏の地でのマラソンといえば「ホノルルマラソン」が歴史を誇るが、近年はアジア諸国でも大会がどんどん増えている。
暑い国の、しかもPM2.5濃度が過酷な大都会でも、国内外から多くのランナーを集めるようになってきた。
過酷な条件下での運営ノウハウは、給水・給食から救急までパッケージとして確立している。このため、「ランニングツーリズム競争」に参入しようとする都市が急増したのだ。
ツーリストの目的が、単なる観光やショッピングから、《体験》に変わってきたといわれて久しい。
そういう傾向の中で、ランニング《体験》を売りにしたツーリズムの《胴元》をやりたい都市が増える。これはしごく当然のなりゆきであろう。
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市民マラソン大会とは違うが、昨夏、インドネシアでアジア大会が開催された。大会の成功に湧くジャカルタは、2032年のオリンピック・パラリンピック招致に立候補している。なお、招致のライバルは、これも常夏のインドである。
一方で、今夏ドーハで行われた陸上世界選手権では、暑さと湿度のためにマラソンで途中棄権が相次ぐなどの事態となり、IOCが来年の五輪マラソン開催地を変更するきっかけとなった。
この件であらためて知れ渡ったとおり、2020オリンピック・パラリンピックは東京都(というか日本国)が主催しているわけではなく、IOCに場所を提供しているだけ。大会を開き、そのためのルールを作っている《胴元》は、IOCさんである。
不適切な例えかもしれないが、ギャンブルで最も稼ぐのはいつでも《胴元》だ。
すなわち、「場を設けて、ルールを作る側」は、「場に集まって、ルールに従う側」から、お金を集めることができるようになっている。
そのかわり「ルールメイカー」は「ルールフォロワー」に対して、集まって従ってくれることに対することへの《報酬》を与える。
その《報酬》は、お金であり、感動とか興奮とか「生きている実感」とか。
そして、資格や学歴などのキャリア要素も、作られたルールに従うことの《報酬》だ。
もう言うまでもないだろう。GAAPこそが、「ルール」の最たるもののひとつなのである。
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さて、人は本来、ルールに従うよりも、ルールを作ることに幸福感を感じる。育児した方は骨身に染みているとおり、赤ちゃんは最強のルールメイカーだ。
しかし、誰もがいつまでもルールメイカーではいられない。たいていの人は諦めて、ルールフォロワーとして生きていく道を探していく。
日本は、その傾向がとくに強いのかもしれないね。ルールに従うことの安心感が、ルールを作ることの満足感を上回る社会。ここで打たれる「出る杭」とは、ルールを作ろう(変えよう)とする人のことなのだ。
おっと、忘れるところだった。ここベトナムは、なんといっても「戦争に負けたことがない国」。
近代になってからは、フランスにも日本にも、そしてアメリカにも中国にも負けていない。
この国に勢いがあるのは、単に若さだけでなく、歴史への自信に裏付けられているからかもしれない。
ハノイの人財からは、いまはルールフォロワーかもしれないが、そのうちルールメイクしてやる、ルールメイカー側に回ってみせる、という気概を感じる。
日本からのアウトソーシング先を求めてベトナムに来たのだけれど、遠くない将来に、ベトナムが日本をアウトソーシング先として重宝する時代が来る。そんな気がした。
なんせ、日本の「フォロワー力」と「ルール作ろうとしない度」は、天下一品だからね。
(USCPA講座 草野龍太郎先生)