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USCPA本科ナマ講義では「ECO」の回を担当させていただいており、毎回「Elasticity(価格弾力性)」の話をする。
自社製品に対するdemand(需要)が「price elastic(価格弾力性が高い)」ということは、「売り手である自社が買い手に対して立場が弱い」ことを示す。
すなわち、自分が価格を少しでも上げると、お客は激減してしまう。
逆に、お客を増やすためには値下げするしかない。
ここで「値下げ」とは、自社製品の価格を下げるだけではない。広い意味で言えば、「お客の要求を断れない」ということである。
とある企業。さまざまな機関から『ブラック認定』されて有名だが、そこでは
「お客様への返事には2通りある。それは『ハイ』か『Yes』だ!」
という伝説的教育がなされている。
「なんでもやります!
やらせていただきますっ!!」
心の中ではかなり不満に思っていても、喜んで「やらせていただいている」フリをしなければならぬ。
なぜ、こうなってしまったのか?理由はシンプル。
お客から見たときに、「あなたの代わりはいくらでもいる」からだ!
「みんな」に合わせて、「みんな」と同じことをして生きてくれば、当然そうなる。
面倒くさいこと、苦しいこと、怖いことを「みんな」と手をつないで回避し続けていれば、結果的に、毎日お客から面倒で苦しくて恐ろしい目に合わされるようにしかならない。
これ面倒だな、やりたくないな、と思った瞬間が分かれ目だ。
「こんな面倒くさいことを、ほんの少しではあるが、手がけた自分」になることを選択したい。
ほんのちょっとでもいいのだ。他の「みんな」は決してやらないのだから安心していい。少しやり始めるだけで、カンタンに差がつく。
「みんな」は、決してやり始めることもなく、変わろうともしない。それを見てイライラしたりしてはいけない。
目的は、自分のPrice elasticity を少なくすること。「値上げ」しても、自分に対する需要が減らないような状況を作ること。
言い換えれば、「仕事を選べる」「断れる」ようになることである!
・攻めて、取りに行く仕事
・いただいて、受ける仕事
・断わる仕事
この選択ができる立場になること。それが Inelastic なプロなのだ。
ここからはおまけ。
仕事の断り方にはそれ自体、とても高い技術が要求される。
(そんなことすら、「みんな」は知らないし、知る機会もないよね、「断る」ことができないのだから)
自分および自分が戦っているマーケットの、現状と今後の展望などを《ていねいに》伝えつつ、目下とりかかっている仕事を(言える範囲で)《ていねいに》説明したうえで、断る。
一番気を使うのが「断わる仕事」であり、断り方にこそ、自分ブランディングのノウハウがあるのだ。
美術品などのコレクターは、色々な作品を選んで買って「マイ・コレクション」を作り上げる。
経営のプロは、自分の事業をなしとげるための人財を集めて「マイ・チーム」を編成する。
それら「買い手」と同じように、自分というかけがえのないリソースを売る側のあなたも、選んで断れるようになればよいのだ。
あなたを買う買い手と、その買い手がくださる仕事を選びぬいて「マイ・コレクション(ポートフォリオ)」を作る。
「返事はハイかyes!」と自分を費用化しながら生きるのではなく、自分の仕事ポートフォリオを育てて、自分と仲間の資産とするほうが、楽しいのではないかな?
え?そうなるための修行が、やっぱり面倒くさい?
はは、長話で引き止めてごめんなさいね、むこうで「みんな」が待ってるよ。
(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)