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USCPAの試験科目は、どれも「ヒトの営み」を対象にしている。つまり、自然科学ではありません。
自然科学というのは、地球が球体であるとか、ホモサピエンスは猿が進化したのだとか、ワクチンはウイルスに対しては意味があるとか、そういう話ですね。
会計や経営や監査や税務法務は、それらとは異なります。
欲と怒りと嫉妬と嘘と裏切りと、そして愛と...によって動く現実の世界。これに、何らかの秩序をもたらそうという「人間の営み」。
その一部が、USCPAの試験スコープなのです。
そのことにイキイキと想いを致せるようになれば、教わる内容もグッと頭に入ってきやすくなる。逆に、教わる内容が、自然科学のような「かっちりした公式」で表されると期待してしまうと、なかなか学習成果が出ません。
例えば、監査法人さんが「reasonable assurance」と言うのは、受任責任をきちんと限定したいから。
でも、経営者にフィーを払わせて監査を受けさせている株主さんのお立場からすれば、
「なにがreasonableだ!逃げる気か?ふざけないでくださいよ!!」
って気色ばむシチュエーションも、十分あり得るわけですね。
このような、関係者の利害の、ガチン!と音を立てるぶつかり合い。
これがわれわれの学習範囲なんですよ。
これを大胆に言い換えますと、
「USCPA試験の学習は、外国語学習と似ている。
ただしそれは、穏やかな日常会話のための外国語ではない。
主張し、議論し、ケンカし、もしくは危機を訴えるための、ほんとに言いたいことを伝えるための道具としての外国語である。
USCPA試験対策で学んだ知識を、主張し、議論し、ケンカし、もしくは危機を訴えるために使えるようになれば、その知識はホンモノとなる」
ということ。例えば、
「これから大雨が降ります!川の近くの低地にいたら危険です、高台に逃げましょう!!」
外国で被災したら、これを外国語で言えたり聞き取れたりしなければならない。
「わたしは外国人です、中国人じゃありません!だからWeChatPayは使えないんです!」
ってのも十分ありうるシチュエーションだ。
同じように、ビジネスの戦場では、
「社長。先日、従業員による経費の使い込みが、また発生しました。
今度こそ、再発を防止するために、社長が自ら『どんなに稼いでいても不正をしたらクビだ』と明言してください」
みたいに、自分の言葉で言えるようにならなければ、AUDのプロとして仕事をもらうことはできないわけです。
この話をさらに言い換えると、
外国語も、CPA学習も、自分が「当事者」のつもりになり切って学習するのがよい、ということです。
■自分が監査人なら、不正経営者をどう攻めるか?
■自分が不正を命じた経営者なら、それにどう反論するか?
それをロールプレイするつもりで、AUDを学んでください。
もっと言うと、
■自分がTAC講師なら、この論点をどう教えるか、
■自分がNASBAなら、どういう問題を出すか
なんてことを考えるのも、大変効果がある学び方です。
「当事者」感覚は、本当に大切です。極論ですが、英語を無理やり学ばされる小中学生のことを考えてみてください。
もし彼ら彼女らが、一生英語を使うことがないと確信していれば、絶対に勉強する気にならないよね。
同じように、絶対にクルマを運転しないと決めている人が、クルマの運転方法を座学で教わっても身に付かないだろうし、
陸上の投擲の選手ではないから一生ヤリを投げることがない人が、槍投げの仕方を座学で教わっても、これまた理解できるとは思えない。
その逆に、この道具は必ず使う、それも、かなりのっぴきならない場面で、必死の思いで使うことになる!と分かっていれば、自ずと集中度が変わるというものです。
これからどうしてもスカイダイビングしなきゃいけなくなったとしたら、どうでしょう?
パラシュートの使い方の説明の間、スマホいじったりして聞き逃したり、決してしませんよね?
そこで「わたしはスカイダイビングなんかしません」と突っ込んで欲しいのではありません。本末が逆です。
みなさんは試験対策をする学習者なのですから、「これから、スカイダイビングに、必ず挑戦することになる!」と自らに言い聞かせ、「当事者意識」を持つことが有効ですよ、というアドバイスです。
(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)