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2019/08/28
成功し続ける方法/357回 <ドラマ『これは経費で落ちません!』にみる経理プロのこれから>
NHKドラマ『これは経費で落ちません!』(総合テレビ金曜22時)より。

多部未華子さん演じる《森若さん》たちが所属する経理部。ここに、会社のいろんな情報が集まってくる。

情報といっても、ロクでもない話だらけです。そこはドラマですからですから、リアリティがどうのこうのと突っ込むのは、ヤボです。

このドラマ、《経理セクション》たるものを象徴的に、実にうまく描いていると思うんです。

主人公《森若さん》は、経理に集まってきてしまう「ロクでもない話」をキッカケに、毎週毎週《情報収集》にいそしみます。

そして彼女なりに《判断》し、上司や仲間に《相談(報告)》しつつ、《自律的に行動》します。

ドラマはドラマとして楽しめばいい。そのうえで、.....これ、もしも現実にみなさんが《森若さん》の上司だったら、どうですか。

毎週ですよ。事務担当の部下さんが、伝票処理にフォーカスせずこんなことばっかりやってる。

そうです、現実には、現場の《森若さん》たちは、みなさんのようなミドルマネジメントから、「ルーティン処理をマニュアルどおりにこなす」こと、それだけが期待されています。

なんなら、《自分で判断》は決してしてはいけません!と指示されていることも。ましてや《自分で社内調査・情報収集》《相談はするものの、自律的に行動》なんて、もってのほかですよね?

「コンプライアンスの30年」を経て、日本企業の経理はガッチガチの「ナイブトーセー体制」を引いています。これは、その30年の前のお気楽バブルの時代の不始末を処理して再発防止するためには、不可避なことでした。

ですから、個々のメンバーは《自律》が許されない。そしてそのかわりに《判断》だの《行動》だのを背負わされているのは、中間管理のみなさんです。

前世紀の悪行のツケを払わされ、守りを固めてきた日本企業経理。それだけでも大変だったのに、ここ10年はグローバル&デジタル化の大波が襲ってきている。

守備(コンプライアンス&コストカット)ができる人材を優先的に登用してきた日本企業は、攻めのやり方がわかるような人はトップになっていない(「お金の使い方がわかる人」は、「お金を使ってしまう人」とみなされて、この30年「偉く」はなれなかった。

そんな守備型トップが、大物コンサルタントの先生などから「これからは攻めの経営だ」と盛んに示唆を与えられています。

大先生方は、攻撃型に変わるためには、ファイナンスセクションも変わらないといけない、守備だけでなく攻撃もできるように変わらなければ」などとご指導されます。「これからのCFOのあり方」的な本にも、そう力説されています。

新しい経理の中間マネジャーはどう動けばいいのか?今までと異なり、記帳されたデータや上がってきた稟議を、ただ承認してワークフローに流していくようなことではダメであると。そこにバリューを付加できなければいけないと。

収集した粗データを《分析》し、そこに足りない《情報を収集》する。そして、簡潔にして要を得た《報告》にまとめて、経営の指示を得て、事態が改善するように《行動》する。

これからの経理マネジャーはこのくらいできてくれないとね、はいCFOのみなさん、社内の経理体制の強化に取り組んでくださいね。守りと攻め、いわば「両利きの経理」ですなあ。わっはっは。

・・・大先生たちのおっしゃるとおり。では、どうやったら中間管理職の限られた時間を、そんなような《分析・収集・報告・行動》に当てられるようになるのか?

その具体的ソリューションがなにも書いてない・教えてもくれない中で、社長やCFOから「経理部、変わってくれたまえ!」と言われても、ほんとにミドルマネジャーは困っちゃいますよね。

トップダウンの指示で、「むかしオレたちが若いころにやったようにしろ」と言われるのも弱りますが、これはまだ「ほんとうにCFOが昔やった手法」という《プロトタイプ》があるだけ考えようもある。

しかし、これから「取り組むべき!」と世上言われているような、デジタル化されたデータまみれの仕事っていうのは、トップはもちろんのこと、ミドルマネジャーも、現場の若手のみなさんすらも1回も経験したことがない。

なんなら、学校でデータアナリティクス教わってきましたけど何か?という新入社員さんがいちばん「できる」かもしれないのです。

ドラマの《森若さん》は、最先端のデータアナリストではありません。しかし、これからの経理の現場パーソンがいかに行動すべきなのか、それを示唆しているようにも見えるわけです。

まあ、草龍の深読みの度がすぎるんでしょうけどね。はい、ドラマはドラマなので、突っ込まずに楽しみましょう。



(USCPA講座 草野龍太郎先生)
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