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話が一回で伝わると思ってるなら、それは僭越で傲慢だ。そんな話を書いた。
もちろんその中身も一回では伝わっていないだろう。そもそもこのメルマガをみなさんに読んでいただける保証など、どこにもない。企業からのメール広告は、ほとんど読んでもらえないのが実態だ。
さて、広告でないビジネス用件のメールであれば、読んでもらえているのだろうか?
もちろん答えはノーである。ビジネスメールも、広告同様に、読んでもらえるとは限らないと考えるべきだ。
かりに読んでもらえたとしても2割しか伝わらないが(この話はあえて繰り返しません)、それはあくまで読んでもらえたとしての話。そもそもあなたのメールは読んでもらえていない。今日では、そこまで覚悟していなければならない。
1日あたり数十、いや百を超える件数のメールを受ける。読者のみなさんにはそんな方が多いと思うし、また、みなさんがメールを送る相手も、そういう立場の方々であろう。
1通あたりの処理秒数が平均10秒でも、100通なら15分以上かかってしまう。まとめて集中して処理できてもそうだが、みなさんの場合、スキマ時間や移動時間を使って数件ずつ処理しておられるのではないか。
コマ切れになると効率は飛躍的に悪化するので、一日のうちのべで1時間くらいをメールに取られることになりかねない。
さらに、丁寧に返信を書かなければならない相手様が数件重なると、かなり苦しい状況となり、会議中などに「内職」を余儀なくされる。
相手も超多忙な方なら、「読んで返信する」だけでどれだけ時間を食うかよくわかってくださっている。だから返信は「承知いたしました!」のひとことで済む。
そもそもそういう方々からのメールは
・超短くて
・冒頭にくどくど挨拶なく
・末尾にもくどくど言い訳もなく
・内容も「なるほど、そりゃそうだ」とすぐに賛成できるような合理的な提案しか書いてない
だから助かる。これに対して、とても困るのは、
・そもそもメールが長い
・「おつかれ様です。お忙しいところまことに申し訳ございません...」 前置きが長い
・「...していただければ幸いです」それって、しなくても受け入れるってことなのか?端的に「...してください」って書いてよ
どう見ても、おそらくこのメール書くのに10分以上かけている、いやもっとかもしれない。そういう方のメールに限り、書いてあることが
「はあ?なんでこうなる??」
だったりする。だからこちらも返信に時間がかかる。
まずは、その方は「短いメールは悪だ」と信じている方なのであろうから、こちらも長めに前置きしてあげて、さらに結びも「していただけるとありがたいです」を忘れることはできない。
そして肝心の、あいての元メールの間違った内容を正さなければならないわけだが、これまた「間違ってます」とストレートに告げると怒ったり悲しんだり訴えたりされる。
こんな時こそ「話は一回では伝わらない」の黄金律を思い出していただきたい。
「メールありがとうございました、何がありがたいと言って、このあいだの会議でのわたくしのご指示が悪かったと気づきました。感謝です。
あのときのわたくしの真意は『火事をすぐに消そう』でしたが、それがあなたに『どんどん延焼させよう』と伝わったのは、わたくしの至らなさ故です。
あらためて、お願いします。火事を消しましょう、すぐに!
いかがでしょうか、ご検討いただけますとありが...」
いや、冗談ではない。間違っても「なあ、火が燃えてるって分からないのかよ、つべこべ言わずにサッサと消してよ」など書いて送ってはなりません。短気は損気。
というわけで、長くて要領を得ないメールを受け取ると、幾何級数的にこちらも時間がかかることになる。
だからといって返信せずに放置しておくわけにもいかない。なぜなら、このような大作メールを連発できる環境にある方々は、
「メールは読んでもらって当然」「メールを送った以上、ボールは相手にある」
「メールにはすぐに返信がくるべきである」
「その返信はポジティブでなければならない」
などと確信していることが多いのだ。
ただでさえ経理の職場では、席で声を上げることができない環境だというケースが多い。電話は論外、対面での業務指示もはばかられる。話があるなら個室に入りましょう的な静まり返った部屋。
なので、「隣の人にもメールする」ことがあたりまえのマナーとして定着している職場も珍しくない。
こういう中では、日常コミュニケーションのメールの海の中に、CFOや監査法人からの緊急メールがポツンと浮き沈みしていることにもなる。生産性以前の問題を起こしかねない。
部署内の会話は、メールを使わずに「Slack」や「Teams」などのメッセンジャーアプリに移行するのが効果的だ。
最初はかならず抵抗に遭うが(変化に抵抗しない経理パーソンは少ない)、わりとすぐに慣れてもらえる。なんと言ってもみな私生活ではLINEやMessengerを頻用しているのだから。
これによって部署内からの連絡には「いいね!」ボタン一つで済むことが増える。メール数が激減したときにどれだけ時間ができるかは、感動的ですらある。ぜひ、みなさんのチームで試していただきたい。
(USCPA講座 草野龍太郎先生)