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物議をかもした「2,000万円たりないとは今さらなにごとか」の件。もちろん、年金の話をこの場でする気はないが、この騒動を通じて改めて自戒したことをお伝えしたい。
話は、2割しか伝わらないということです。
それには、2つの意味がある。1つは「話そうと思った主旨のうち、2割しか伝わらない(8割は伝わらない、もしくは、誤解される)」ということであり、2つめは「聞いてくださった方々のうち2割にしか伝わらない(8割の方には伝わらない、もしくは誤解される)」ということでもある。
であるから、本気で想いを伝えたければ、話は1回では足りない。1度や2度で相手に話が通じると考えること自体、傲慢の極みである。そう、改めて自戒したのである。
そもそも、他人様のアタマは皆さまのアタマとAPI連携しているわけではないのだ。むしろ相手に「は?そんな話、初めて聞きました」と反応されて当然だ。「前にも言いましたよね?」などと横柄に応酬してはならない。お伝えする回数が足りていなかったのだ。
よく、キレて「こないだも言ったよね」「いったい何回言わせるの」とおっしゃる方もいる。お答えは「7回」である。・・・ただし、あまりにもキレている人には、あと6回伝えるチャンスがないかもしれないが。
「7回」には、ちゃんと根拠がある。それは《80−20の法則》だ。
0.8を7乗すると、およそ0.2になる。これすなわち、「1回話しても、話は8割は伝わらない。しかしそれを7回繰り返せば、『伝わらない率』はおよそ2割にまで減る」という計算だ。
「話は7回繰り返せば、8割は伝わると期待できる」ということである。
逆にいうと、話を7回繰り返そうとも、自分の考えていること・言いたいことのうち「2割」は、決して他人には伝わらないということだし、「2割」の方々には話が伝わらないということでもある。
これは決して「2割」の相手様が「悪い」という意味ではない。問題は相手の理解力ではない。自分自身こそ、他人様のお話をせいぜい8割しか理解できない、と客観的に自覚することこそが重要なのだ。
「なに言ってんの、ワケわかんないよ」というフレーズは、相手を強力に全否定する言葉のひとつである。これは「あなたがまともなコミュニケーション能力さえあれば、わたしはあなたの発言が理解できるはずだ」という前提の上に立っている。もしもあなたが謙虚かつ客観的に「おたがい、7回くらい話したところで、せいぜい8割しかわかりあえないよね」と自覚していれば、こういう非難を口に出してしまうことはない。
ともあれ草龍は、「誠心誠意、7回伝える」の実践を心がけている。もちろん、ただ単に「7回繰り返す」だけでは、受講生の皆様はじめ聞いてくださる方々に対して、とても失礼だ。
どうしたら、7回という大量の回数、同じ内容を聞いていただけるのか?手を変え品を変え、どう飽きずに耳を傾けていただけるか?それこそが「伝える技術」「話術」というものであり、講師としてもいち個人としても、研鑽を続けているところである。
「伝える技術」は難しくて深い。その研鑽に日々取り組むことで、自分の言いたいことの伝達率も向上してほしいが、それより何より「他人のお考えを自分が理解できる率」を向上させたい。
草龍も、昔であれば「ベテラン」「長老」などと祭り上げられたであろう年代になってきた。しかしこれからの時代、年功序列は通じない。
「だからああああ、前も言いましたけどおお」などと不機嫌になり、若い方に「申し訳ありません!」と言わせるようなコミュニケーションは、これからは自分の信用スコアを落とすだけである。
であるから、「7回お話していないのだから、わかっていただけていなくて当然」「7回お話させていただき、8割がたわかっていただけて、とてもハッピー」と素直に思える自分で居続ける修行が絶必だ。
以上、自戒したという話でした。
(USCPA講座 草野龍太郎先生)