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サミュエル・ウルマン(1840〜1924))の『青春』という詩をご存知だろうか。
『青春とは、人生のある期間を指すのではなく、心のありかたのことだ。優れた創造力・たくましい意志・燃える情熱・卑怯さをしりぞける勇気・安易さをしりぞける冒険心、そういう心のありかたを青春というのだ。だから人は年を重ねただけでは老いない。理想を失う時に、初めて老いる。...』
この詩は、多くの人々を力づけてきた。
そして、、、多くの人々を勘違いさせてきた。
「わたしは若い。考え方の柔軟さや、リスクの取り方は、むかしと変わってない。
もちろん見た目もまだまだイケている。ちなみに、クルマの運転も衰えていない」
... どうだろう?ほんとに青春まっただ中にある人は、「自分は、若いなあ」とは思わない。思わないからそれを自分に言い聞かせたりもしない。まして他人に「オレ、若いだろ?そうだよね??」などとからんだりはしない。
「そうか、『俺はまだ若いのに、年寄り扱いされて悔しい』と思う時点で、俺はすでに若くないんだ」
その程度のことは、自分のことを自分自身で客観的に見ることができれば、カンタンに気づくことができる。
このように、自分を自分自身で客観的に見ることを「メタ認知」という。
元ANA整備士の中村恒徳さんによると、ミスしやすい人は共通して「メタ認知能力が低い」のだそうだ。
メタ認知能力があれば、「今日は体調が悪いな」「集中力が足りないな」と自分の異常を認識できる。そうすると「今日はとりわけ、色んなことに気をつけよう」と自戒する。なんなら周りの人にもアラートしておくといい。それにより、ミス防止の可能性を高めることができるだろう。
自分のコンディションが悪いことを客観的に認め、高まったリスクをマネジメントする。そう、これは、「無知の知」にも共通する知的謙虚さなのだ。
かたや、メタ認知能力が低い方々は、能力の低下に気づかない。
ミスを指摘されても「いいえ、わたしはちゃんと確認しました」... いや、現にミスってるんですけど...「おかしいですね、でもわたしちゃんと確認したんです。誰か他の方が余計な手を加えたんじゃないですか!?」
すさまじい他責パワーだ。その何割かでいいから、ご自分のメタ認知能力向上に振り向けられないものだろうか?
そう、メタ認知能力は、日々のトレーニングで向上するという。
お仕事や学習でミスをしやすいと悩んでいる方、落ち込んでいる暇があったら訓練して課題を解決しよう!
ミスの原因であるご自身のメタ認知能力の低さを、日々、改善していこう!
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1 客観トレーニング
ときどきでいいから、自分の姿を動画に撮って観る。話していることを、録音して、あとで聞き直す。
スポーツ選手やアーティストなどにはあたりまえのトレーニング手法である。オフィスワーカーにも効果があるはずだ。
2 失敗レコーディング
「急いでメルアドを手打ちしたらタイポした」
「チェックリストに明示されているのに漏らした」
「行き先をまちがえた」
などと書いておく。
その際に、自分がどういう精神状態であったのかもカンタンに書いておく。細かくしなくてよい。上機嫌であったか否かだけでもよい。
3 上機嫌トレーニング
1と2の結果、上機嫌をキープすることがミス削減のためにいかに効果的か、がお分かりになるとおもう。
成毛眞さんは、「一貫してポジティブな言葉をフランクな言い方で発信し、笑顔を鍛えてフレンドリーに見られるようにすること」が、これからとても大切だとおっしゃっている。
政治家さんはいうまでもなく、ビジネスパーソンに必須の条件、それが「上機嫌キープ力」なのだ。そしてもちろん、受験合格をめざすみなさんにも。
「キープ客観、ステイ上機嫌」、それによる「メタ認知力のアップ」。人によっては時間がかかるかもしれないが、それでも取り組む価値がある。
たんにミスを減らすためだけでない。知的謙虚さを忘れないために、ひいては自分の加齢に素直に向き合うためにも、とても有効なトレーニングなのだ。
ぜひ一度実践してみていただきたい。
(USCPA講座 草野龍太郎先生)