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2019/04/17
成功し続ける方法/343回 <ノートル・ダムが燃えている>
出張でパリに着いたら、街は大騒ぎだった。なんと、ノートル・ダムが燃えている。

フランス検察は、大聖堂修復工事中の失火とみているという。古い木造建築なので、電気で火花が飛んだ系の事故だったのかもしれない。しかし、もしも工事技術者の方のタバコが原因だとしたら、それも、またまた大きな問題に発展するだろう。

草龍は煙を遠目に見て、まっ先にテロを疑った。パリに対して申し訳なかったが、昨今の情勢を鑑みると誤解も仕方ないと思う。

パリに限らず、海外の大きな都市では、警察官が機関銃を下げておられるのをよくみる。

駅やイベント会場や大規模な店舗などの入り口ではセキュリティチェックを受けることも多い。「荷物全部開け」はふつうで、なんなら犬に一つ一つ嗅がせたりする。

その結果、大行列になることも珍しくなく、現に先ほども、パリ北駅でロンドン行きに乗り遅れそうな人が列の後ろで騒いでいた。もちろん、警備の方は一切動じない。

ここまでの厳戒ぶりは、日本ではあまりみられない。やはり日本の安全ぶりは抜きん出ている。

日本で「世界的に知られた歴史的建造物が燃えた」と聞いたとしたら、直感的に何が起きたと思うだろうか?放火という犯罪は想像できても、「大規模テロの標的にされた」とまでは、ちょっと思いつかないのではないか。

保安のことだけではない。日本は生活のコスト全般が、相対的にかなり安い。というか、諸外国でのコストアップがこれまたハンパない。

たとえば、フランスの大規模デモの原因となったクルマの燃料コスト。パリでは1リットルあたりおよそ1.5ユーロ、それも、ガソリンと軽油(ディーゼル)の価格差はほとんどないんだという。

ガソリン価格の大半が税金である点は日本も同じだが、それにしてもリッター200円は高い。しかも軽油も同じような価格と聞けば、「黄色いベスト」デモが起きたのもしごく当然に思える。

ユーロスター(パリ・ロンドン間の列車)で隣席となったドイツの方に聞いたら、ミュンヘンではガソリンが1.5ユーロ弱、軽油は1.2ユーロ程度だそうだ。やはり高い。

この方はロンドンの街中にお住まいで、日本でいう2LDK的な部屋の家賃が月3,300ポンド(50万円)だと嘆いている。街中といっても超ド真ん中ではないそうで、どうやら東京の相場から「倍」という感じのようだ。これまた高い。

ロンドン駐在の日本の方からよく聞くのが、お食事の値段は「2で割る」と言うこと。たとえば、ちょっとしたランチが3,000円するので、「これは1,500円なんだ」と思うようにするそうだ。地下鉄料金なんかも同じ。

物価高騰に加えて、ロンドンはいま、とても大きな問題を抱えている。言うまでもなくBrexit リスクだ。多くの企業や機関が流出し始め、職が減りつつあるのだ。逆にとなりのダブリンは活況に沸いているらしい。

このように、お国によって、また都市によって、抱えている悩みはほんとうにさまざまだ。

「外に出ると、日本の良さと、ダメなところが、改めてよくわかる」

... 平凡な言い方だが、ほんとうにその通りなんですよね。日本の、それも一カ所にじーっとしていて、そこで見えるものだけをもとにあーだこーだ言っていると、とてもバランスが悪い考えにおちいることになる。

そもそも人間、ときどき移動して環境を変えたほうがよい。そうしないと「不満の対象」が固定されてしまうからだ。

たとえば、入院して動けなければ、24時間ずーっと病室内のことに執着するハメになる。

狭い職場や地域で、来る日も来る日も同じ人たちと顔を合わせているから、お互いの弱みがイヤと言うほど見えてしまう。

その点、あちこち動き回っている人は、ひとつの環境や人間関係に囚われている時間が物理的に少ない。このため「不満の対象」が一点に集中する危険が減る。

これはいいことだ。そのかわり、「地元の仲間と深くわかり合う」「ムラのボスに超かわいがられる」などの権利は失うことになるかもしれないが...。

このコラムの読者は、「あちこち動き回る方」が多いと察する。みなさんグローバル資格を目指しておられるから、という推測に過ぎないけど、もっと言えば「今後もあちこち動き回って働いていきたい」と熱望しておられるがゆえに、グローバル資格とユニバーサル知見を身につけようとしているんじゃないだろうか。違います?

だからこそ、みなさんに向けたこのコラムの一貫した主題は「郷に入りては郷に従え」なんです。

草龍は、みなさんと一緒に「たまさかこのムラに縁をもらった以上、ここでサバイバルするにはどうすればいいだろう?」と考え続けているつもりなのだ。

繰り返し申し上げていることは、まずはこのムラのダメなところ、カンタンには変わらなさそうな「岩盤weakness」をしっかりとわきまえること。これ絶必ね。

それは「ムラの広場で空回りする」ようなヘマを避けるためだ。

空回りというのは、「外国では〜〜」を連発し、変わらないことを変えてやろうとリキむようなこと。

ムラはカンタンには変わらない。岩盤を素手で殴っても、こぶしを骨折するだけ。それでは「(このムラで)成功し続ける方法」とは言えないわけです。

まずは、あちこち動いて、いろんなものを自分で見聞しよう。それによって、客観をキープし、なにが事実かを認識しよう。

その事実認識をしっかりふまえたうえで、どうすれば世の中にたいしてより多く貢献できるか、それを考えて、少しでもいいから、いますぐ実践しよう。


(USCPA講座 草野龍太郎先生)
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