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「バイトテロ(アルバイトさんによる過度の悪ふざけ)」が跡を絶たない。ついに経団連の中西会長が記者会見で言及するに至った。
「やってしまった人に対する措置(処分)はいろいろと厳しいことはあったとしても、経営者として考えれば、やはり仕組みから直していかないとうまくいかない。
個人の善意に依存したオペレーションは、どこかでほころびが出る」
さすが中西さん、ことの本質を見抜いておられる。
部統制構築のカギは「性弱説」である。「性悪説の信奉」でも「性善説の否定」でもない。
人間の本質は「性弱」であることを客観的に認めて、それで初めて『うまくいく仕組み』が作られていく。
言いかえると、人間の「性善」に期待する仕組みは、けっして長続きしない。人間は(自分自身も含めて)すぐに気が変わり、逃げ、裏切る「性弱」なものである。
こんにち、リーダーはけっしてパワーハラスメントせずにチームを率いて高パフォーマンスを発揮しなければならないわけだが、そこで求められるリーダーの資質とは、けっして「優しいこと」などではない。
必要なのは、「メンバーの『性善』に期待せずに『仕組み』を作ることができる能力」である。
期待しないから、失望しない、怒らない。「すでに寝ているものは転ばないの原則」を腹の底から信じて、実践できる人が、リーダーに向いている。
そもそも、他人であるメンバーの頭の中を「期待」でコントロールするなど、不可能なことだ。
さらに、メンバーも(そしてリーダー自身も)、頭で考えることを100%カラダに納得させて実行することなどできはしない。脳はしょせん、「性弱」なカラダ(腸)の付属品に過ぎないのだ。
読者のみなさんは、国際会計資格などを通じてリーダー層入りを目指しておられる。だから、他人にも、そして自分自身に対しても、怒ってはいけない。失望してはいけない。期待してはいけない。
注意しよう。ここで「期待しない」というのは、
「どいつもこいつも、どうせダメなヤツらなんだ、と上から冷酷に見下ろす(見放す)こと」
とは、全く違う。
一人ひとりの「弱さ」を客観的に認めることこそが、その人の「強み」をも客観的に捉えることになるのだ。性弱説によるマネジメントこそが、メンバーを真にリスペクトすることなのだ。
そしてさらに、この「性弱認識」が、リーダー←→メンバーの間だけでなくメンバー間で行われれば、チームは一丸となって「性弱説に基づいた『仕組み』作り」に取り組むことができる。
研究によると、会社従業員の仕事の何割かは、自分の弱さや失敗を隠蔽することに使われているという。
その点、「性弱の相互承認」が、恥ずかしがることなく行われている組織なら、そういう弱さ隠蔽コストも激減できるわけだ。
弱さを見せ合ってみんなで弱さを克服しようとするか?
それとも、弱さを隠しあって、みんなで強がり続けるか?
「当社ではこのような不祥事は起きるはずがない!なあ常務、そうだよな?ああん?」
なんて感じの「性弱を認めないトップ」が居座っている組織は、とても不幸だ。
トップはカンタンには変えられないが、あなたの人生のトップ(つまりあなた自身)は、いつでも変われる。まずはあなたの性弱と客観的に向き合ってみよう。仕事や、生活や、そして学習が、大きく進歩するよ。
(USCPA講座 草野 龍太郎 先生)