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2019/02/13
成功し続ける方法/第336回 (草野龍太郎先生 連載コラム)
飲食店やコンビニ等のアルバイトの方々による「悪ふざけ」が話題になっている。
店頭や厨房で「悪ふざけ」を働き、それを動画に撮って、SNSで拡散させる。
これが、雇用側の衛生管理に関わるほど度を越した「悪ふざけ」だったりするため、ネット上で大炎上し、すぐに本人が特定される。

被害を受けた雇用側は、すぐにバイトさん達を解雇するだけでなく、損害賠償を求める。
刑事事件化する意思を表面している会社さんもある。
一罰百戒効果を期待してのことだそうだ。
所詮はバイトさんだ、これだから終身雇用で身分の保証された正社員でないと信用できない、というような意見もある。
確かに、「正社員の身分」をかけてこのような「悪ふざけ」をして、それをネットで公開するような人は、かなり珍しいだろう。

しかし、正社員だから「悪事」を働かないということはまったくない。
データ偽装、産地偽装、決算の粉飾などなど、むしろ正社員が「正社員の身分」を守るために起こしてきた「悪事」は、数限りがない。
そのへんの事情があるからこそ、我々会計プロフェッショナルやリスクマネジメントプロフェッショナルが企業から求められるわけだ。
しかし、だからと言ってこの状況が続いて良いはずがない。

内部統制を強化する、内部通報制度を確立する、など様々な対策がとられてきた。
SNSの発達と、録画録音デバイスの普及により、「正社員の悪事」もどしどし公に晒されるようになっている。
悪事が増えているのではなく、世に流通するようになっただけなのだ。
「正社員の悪事」をさらに減らすためには、流動性の高い世の中になることも意味がある。
「悪事を強制されるようならその会社を辞められる」ということだ。

そもそも、多くのひとは子供のころから「辞める経験」が少ない。
学校も、部活も、住むところも、合わなかったら辞める・ほかに移るべきなのだが、得てして「ダメなヤツ」「裏切り者」なんて責められたりする。
会社を辞めるのが怖い人は、「正社員の悪事」を引き受けてしまう。
ならば、それを防ぐわれわれとしては、「辞める」と言う人を責めない文化を作ること(辞めるなと圧をかける役員などを牽制するなど)が重要だ。
さらに、「辞めたい」と思った時に辞められるような「社外でも通用する人材の育成」も欠かせない。

これまで企業は「終身雇用に耐えるように、社内の仕組みに通暁した人材」ばかりを育成してきた。
定年後、再就職エージェントに「何ができますか?」と聞かれ、
「わたしは◯◯会社の▲▲本部長ができる!それは私にしかできないポストなんだ!!」
と答えてしまうような方を量産してきた経済界の罪は軽くない。
社員の教育に関する発想を抜本的に変えなければならない。
その投資を経営に認めさせるようなことも、われわれリスク責任者の仕事としたいものだ。

さて、話はアルバイトさんたちの「悪ふざけ」に戻る。
Twitterでこんなような投稿を見て、感動した。
Q.ある外食チェーンのバイトからは「悪ふざけ」が生じない。なぜか?
A.制服にポケットがなく、勤務中にスマホを持ち込むことができないから

人間は弱い。性悪なのではなく、「性弱」なものだ。
だからこそ、人を雇って事業を大きくしたいなら、人の弱さをカバーする「仕組み」が不可欠なのだ。
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